【月間ベストファイター・1月】野杁正明、崖っぷちからの復活KO勝利！3月ONE日本大会で強豪タワンチャイとタイトル戦へ

■長身ファイターの距離に戸惑うもKO勝利

　ONE3戦目のシャーキル・タクレティ戦は、「本当に負けたら終わり。崖っぷちの試合」と背水の陣で臨んだ試合となった。7歳の長女は、父親が連敗していることを知っていたようで、ゴングが鳴る前から怖くて泣いていたという。妻は自分が一番ドキドキしているはずなのに「パパは絶対に勝ってくれるから大丈夫だよ」と娘をなだめた。

長身のタクレティ（左）との試合は独特な距離感があったという野杁（右）

　そんな中で迎えた再起戦で野杁は、「リーチがあったんで、やりにくかった」と長身のタクレティの手足の長さに戸惑いがあったそうだ。独特な距離感があり、詰めたい時に前へ出られないやりにくさを感じていた。

　それでも野杁は、カーフキックで前足にダメージを与えていく。タクレティは、すぐにサウスポーにスイッチして対応する。それを見た野杁は、自分もサウスポーに構えて両足を潰す作戦に切り替えた。

　作戦が功を奏し、野杁は相手の足を蹴り続けてKO勝ち。ようやくONE初勝利をものにした。野杁の家族は涙を流して喜び、5歳の息子は「僕もパパのようになる！」と誇らしげに語ったそうだ。本来の実力を出せれば、もちろん勝利は早く訪れていただろうが「ようやくスタートラインに立てました」と野杁は生き残ったことに安堵した。

野杁の強烈カーフ！タクレティのスネがぐにゃりと曲がっている　©️ONE

　無敵の王者がこぼした“スタートライン”の意味について聞くと「僕がONEへ来たのはチャンピオンになることなので、まだスタートラインにも立てていなかった。やっと1勝してONEの一員になれたというか、ONEファイターを名乗れることができました」と本音をこぼした。

　セコンドについた渡辺代表は野杁に「正明はチャンピオンになるためにONEへ来たんだから、嬉し涙はそれまでとっておくね」と声をかけたという。野杁は「雅和さんは僕だけではなく、みんなのミットも持っている。誰よりもキツイと思います」と結果を残せたのは、チームのみんなのおかげだと振り返った。

■“ラスボス”タワンチャイとの次戦について

カーフキックで見事KO　©️ONE

　ONE初勝利を挙げた野杁は、3月23日（日）にさいたまスーパーアリーナにて開催される『ONE 172 : TAKERU VS RODTANG』への出場が決まった。

　相手は、この階級の“ラスボス”とも言えるONEフェザー級ムエタイ世界王者のタワンチャイ・PK・センチャイ（タイ）だ。野杁が3戦目をした大会ではメインイベントでスーパーボン（タイ）を2R KOで沈め、フェザー級ムエタイ4度目の王座防衛に成功している強豪中の強豪である。

　下馬評では、野杁が不利という予想が圧倒的に多い。この状況に対して野杁は戸惑うどころか「ワクワクしかないです」と喜んでいた。強がっているという印象はなく「僕は昔から絶対に勝てないと思われる選手と戦いたいと言ってきましたが、やっと望んでいた試合が組まれました。野杁が不利だという意見を見ると、“おおっ”となります。純粋に心から楽しんで試合ができる」と声を弾ませた。

　武尊もそうだが、相手が強ければ強いほど燃えるメンタルを野杁も持っている。自分がボコボコにされる可能性が高くなっても喜ぶというのは、凡人では理解できないことだが、これがトップクラスで戦うために必要なメンタルなのだろう。

野杁正明、タワンチャイと暫定王座決定戦へ！

　野杁は、嬉しそうに言葉を続ける。「これを引っくり返したら、どんな状況になるんだろうと考えると楽しくて仕方ないです。勝つつもりでいますし、どれだけ蹴りが強いんだろう、どれだけ強いのか知りたい」と恐怖心よりも好奇心が優っているようだ。

　それにしても得意のカーフキックやヒザ蹴りが、あのタワンチャイに通用するのだろうか。自信を聞くと野杁は「通用するかどうかは分からないけど、当たれば痛いのは間違いない。あとは、タワンチャイ選手がもらったことがない攻撃が、僕の技のレパートリーにある。それが当たった時に、どれほどのダメージを与えるかが一番のポイントになると思います」と秘策があることを匂わせている。

　不利の予想については「どんどん言ってください。結果的に試合に興味を持ってくれれば僕は気にしないので、むしろ有り難いことです」とアンチも含めて盛り上がってほしいと付け加えた。

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