【月間ベストファイター・7月】強豪パトリッキーを撃破した野村駿太、目の骨折を乗り越えて見えてきたものとは?
■井岡一翔から教わった大切なこと
現在、野村はBRAVEだけではなく、ロータス世田谷などで出稽古をしている。とくに師と仰ぐ青木真也とのグラップリングスパーで、野村の技術は目覚ましく向上しているという。
青木との練習の成果について野村は、「一番はグラップリングで攻めるという意識が芽生えたことです。青木さんとスパーをするといつもやられるわけですけど、攻めながら“アクション”“来いよ”と声をかけてくるんです。守っていてもやられるので、だったら攻めようと思うようになりました」とテイクダウンディフェンスに徹するだけではなく、自らも攻めることで考えることの楽しさに気づいたそうだ。
また野村は、ボクシング世界4階級制覇王者の井岡一翔からも影響を受けている。サプリメント会社HALEOのサポートを受けている野村は、同じHALEOチームの井岡と練習が一緒になることがある。その時に井岡から「変化を恐れないこと」や「練習の意味を説明できるようにする」ことを学び「格闘IQが上がったように思います」と感謝していた。
井岡の指摘する“変化”とは、つねに同じ場所だけでやるのではなく、幅広い交流の中で自分の技術に伸びしろをつけること。「現状維持は退化」を教わったと話す。また、ただ目の前の練習に取り組むのではなく、なぜやっているのかを説明できるようになることが大切だと力説された。青木の教えもそうだが、リスクを負って挑戦して学ぶことによって考える力がつき、初めて自分の動きにフィードバックされるようになるのだろう。
4年半、地道に取り込んできたことに考える力がプラスされ、野村駿太というMMAファイターが本格的に覚醒しつつあるようだ。
■1Rに眼窩壁を骨折する大怪我を負っての戦い
パトリッキーへの恐怖を克服するため、厳しいトレーニングを積んできた野村は、前日計量で相手と対峙した時には「行ける」という気持ちに変わっていた。
それはリングで向かい合った時も変わらず、自信に満ち溢れていた。そして1R開始のゴングが鳴る。野村は、「相手は飛ばしてくると思っていた」とカウンターの攻撃を用意していた。ところがパトリッキーは、意外にも待ちの姿勢を取ることに。ともにカウンターの打撃を狙い合う、予想外の攻防が繰り広げられることとなった。
野村は伝統派空手仕込みの飛び込んでのパンチを何発かヒットするも、いずれも単発でその先の展開が見られない。このまま終わるかと思われたその時、終了間際にパトリッキーの攻撃が野村の左目を襲った。「ヒザ蹴りかワンツー、バッティングのどれかが左目に当たって、直後は相手が2人に見えました」と野村はパトリッキーの打撃でダメージを負ったと明かす。1R終盤だったことだけが、幸いだったのかもしれない。
2Rも、相手が2人に見える症状は変わらず。野村の異常を感じたのかパトリッキーは、積極的にパンチを放つようになる。野村は「殴り合いになったら相手のペースになるので、そこは避けようと冷静になっていました」とステップを使い、ディフェンスに重きを置いた。ピンチの中でも冷静になれたのは、これまでの練習の成果とDEEPで培ってきた経験が発揮されたのだろう。
■すべての動きが見えた最終ラウンド
勝負となった3ラウンド。野村は「激しく動いたためか、なぜか薄目になると左目が見えるようになっていて、最後は行こうと思っていました」と縦拳でのジャブ、強烈な右を次々と決めていき、パトリッキーの顔面を鮮血で染めていった。
野村の左右の連打を食らったパトリッキーは、防戦一方となる。流血でドクターチェックも入ったパトリッキーは、左まぶたや目の下、更に鼻血も出ている。中断後、試合が再開されると、パトリッキーが大振りの右を振っていく。それをかわした野村は、次々とカウンターの右を当てていった。パトリッキーが、コーナーに吹っ飛ぶ場面もあった。
最後はパトリッキーが組んで倒し、サッカーボールキックを放つも、野村が鉄槌を連打して試合終了のゴング。判定で野村がパトリッキーを下し、金星を挙げた。
最終ラウンドの神がかった動きを、野村は「先読みではないですけど、次に相手がどんな攻撃をするのか分かりました。怪我があったため、より集中できたのかもしれません」とゾーンに入っていたという。
■試合後の深夜、負傷した目に激痛が走る
パトリッキーを破る金星を挙げた野村に対して、リングサイドで観戦していたRIZINライト級王者のホベルト・サトシ・ソウザはリングへ入り、対戦をアピール。9月の名古屋大会で2人の試合は、ほぼ内定かと思われた。だが、パトリッキーにやられた左目の怪我は予想以上に悪かった。
試合を終えた野村はバックステージでドクターチェックを受けるも、アドレナリンが出ていたためか痛みがなく、眼球も無理やり動かしたといい、検査結果は「異常なし」。
ところが、ホテルへ戻り深夜になると、負傷した目に激痛が走った。すぐに家族が救急で病院へ連絡するも、眼科医は朝にならないと来ないとの返事。翌朝にならないと診てもらえないことが分かり、あと数時間耐えることに。目を閉じると痛みがあるため、寝ることはできない。一晩中、カフェインを飲んで寝ないように耐え続けたと野村は明かした。
翌朝病院へ行くと、診断は『左目眼窩壁骨折』。いわゆるメガネのように眼球を保護する眼窩底ではなく、内側の眼窩壁が折れていた。一時的に相手が二重に見えたのは、眼球が内側に入っていたためだろう。
二日後、手術をして無事に成功。すでに軽い運動なら開始してもいいと医師から許可が出た。完治するのはまだ先だが、9月にサトシと堀江圭功がタイトル戦を行うため、研究ができると前向きになっていた。
サトシへの思いを聞くと、野村は「堀江選手は同じ空手出身なので、サトシ選手を相手にどんな試合をするのか参考にしたい。ピークのサトシ選手を超えたい」と話した。もちろん堀江が勝てば、ターゲットはサトシから堀江になるのだろうが、サトシを超えることが目の前にある課題だ。
さらに、その先の目標について野村は「強い人と戦っていきたい」と世界を見ていた。現在27歳の彼は、パトリッキーを破り、伸びしろしかない。彼がどこまで強くなるのかは、神のみぞ知るということなのだろう。
■野村が受賞の喜びを語る
イーファイトの月間ベストファイターに初選出された野村は、「有名な方たちと同じ賞をいただけて光栄です」と喜んでいた。イーファイトからは記念盾、ゴールドジムからはサプリが贈られる。
(取材/文=松井孝夫、構成・編集=イーファイト編集部)
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