2016年6月度MVPスペシャルインタビュー T-98(REBELS)
毎月イーファイトが取材した大会の中で、最優秀選手を決める月間MVP。2016年6月のMVPは、6月1日(水)東京・後楽園ホールで開催された『REBELS.43』でラジャダムナンスタジアム認定スーパーウェルター級王座を奪取したT-98に決定!(2016年7月11日UP)
PROFILE
T-98(たくや) |
選考理由
1、「ラジャダムナンスタジアム認定スーパーウェルター級王座を奪取」
2、「タイ人以外が王者になったのは500年の歴史上6人目」
3、「日本人としては石井宏樹以来5年ぶりの快挙」
選考委員
Fight&Life、ゴング格闘技の各格闘技雑誌の編集長とイーファイトの全スタッフ
受賞されたT-98選手には、ゴールドジムより以下の賞品(プロカルシウム 300粒 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、イーファイトより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジムMVP記念インタビュー
本拠地タイで防衛しなければ本物にはなれない
■いかにしてムエタイ王者を攻略したか
世界と名の付くムエタイの世界タイトルは数多くあるが、その中でも最高峰だと誰もが認めるタイトルは、タイにあるムエタイの2大殿堂ルンピニースタジアムとラジャダムナンスタジアムが認定する王座だ。タイトルに挑戦するどころかランキングに入ることすら難しいこの頂に、多くの外国人選手が挑み、敗れていった。
タイ人以外で2大殿堂のベルトを巻いたのは、ムエタイ500年の歴史の中でもたったの7人。藤原敏男、小笠原仁、武田幸三、ムラッド・サリ(フランス)、 石井広樹、ジョイシー・イングラムジム(ブラジル)、ダミアン・アラモス(フランス)だけだ(※サリ、アラモスはルンピニー王座で他はラジャダムナン王座)。
その高く険しい頂にT-98(たくや)が挑んだ。T-98は昨年9月、WPMF世界ミドル級王座決定戦で当時のラジャダムナンスタジアム認定スーパーウェルター級王者アウナン・ギャットぺぺを破り、同スタジアム認定スーパーウェルター級5位にランクイン。タイトルに挑む権利を得た。
当初はアウナンとの再戦でタイトルマッチが組まれるはずだったが、直前になってアウナンが王座を返上。3月27日に挑戦者決定戦が行われ、新王者のナーヴィー・イーグルムエタイに挑むことに。
「タイトルマッチがアウナンとの再戦になれば、勝てる自信はありました。本当の理由は分かりませんが、直前になってナーヴィーが王者となったのはラジャがやる気を出したのかな、と思いました」
他のタイトルならばともかく、至宝ラジャダムナンの王座を外国人に渡すわけにはいかない。一度負けているアウナンよりも、別の若くて勢いのある選手の方がタイトルを守れる可能性が高い、とタイ側が王者を変えたのではないかとT-98は推測している。
新王者ナーヴィーは手足の長さを生かし、左右ハイ&ミドルキック、前蹴りを中心としたファイトスタイル。首相撲では積極的にヒザ蹴りを放つが、相手のヒザを封じることが得意。試合映像を見たT-98陣営は「パンチのディフェンスには難がある」と見抜き、パンチ主体で行く作戦を立てていた。
試合では、1RからT-98の左フック、右ボディストレート、左ボディブローがヒット。ボディを狙うのも作戦だった。
「顔は動くから当てにくいけれど、胴体は面積が広いから当てやすいじゃないですか。それを嫌がってくれたからよかったですね。日本人選手の顔にパンチを当てるのも難しいのに、タイ人はもっと難しいですよ。僕は1RでKOというのがほとんどなくて、疲れさせて後半にKOすることが多いんです。ボディへのパンチとローキックで削っていくスタイルですね。タイ人コーチは顔ではなく胸の辺りを狙えと言っていました。そうすればいつかは顔に当たる、と(笑)」
2Rもボディブローを次々と命中させるT-98に対し、ナーヴィーは首相撲に持ち込んでのヒザ蹴りを仕掛けてきた。これでやや劣勢になったT-98だが、3Rからは相手が組んで来ると押し離してパンチで攻撃。
「日本人選手は、組まれた時に首相撲を露骨に嫌がって力任せに振り解くことが多い。それを僕も前に1度やってコーチに怒られました。その時は疲れてしまって、力任せに振り解いてしまったんですよね。そうしたらそれはダメだと。それは言われてからずっと意識して練習しています。今回も組まれたんですが、下がらずに押すとか対策が出来たので、そこではポイントを失わずに済んだと思います」
■「まだまだです。僕なんか全然ですよ」その理由
ムエタイにおいて特に重要だと言われてきたのがミドルキックだ。ミドルキックをもらうことが採点を大きく左右する、と。しかし、この試合でT-98は3Rと4Rに右ミドルをもらい、脇腹が赤黒く腫れあがった。これでは判定になった時に不利だ、という見方をされていたのだが、そうではなかった。
T-98のコーチは、ラジャダムナンスタジアム認定ライト級王座を始め、多くのタイトルを獲得してきた名選手ジャルンチャイ。2011年に石井宏樹がラジャ王座を獲得した際にもコーチを務めた手腕の持ち主である。そのジャルンチャイがT-98にアドバイスしたのは、「ミドルを蹴られてもいいんだよ」ということだった。
「僕は蹴られても身体がブレなかった、痛みを顔に出さなかったからよかったのかもしれないですけれど、蹴られてもビックリしなければいい、蹴られっぱなしにならなければいいと教わっていました。蹴られてもすぐにパンチを2~3発連打して当てれば、マイナスポイントにはならない、と」
そして迎えた最終ラウンド。セコンドからは「ここまでドローだから、このラウンドを取った方が勝つ」と言われてT-98は自分のコーナーを飛び出した。いきなりナーヴィーのハイキックをもらってしまったが、パンチで攻め込んでナーヴィーがガクッと膝を折る。これが決定的なポイントとなり、判定はジャッジ三者がいずれも1ポイント差でT-98を支持。T-98が史上6人目の外国人王者となった。
しかしT-98自身、「まだまだです。僕なんか全然ですよ」とラジャダムナン王者になった今でも満足はしていない。T-98が目指すのは、聖地ラジャダムナンスタジアムでタイ人選手を相手にタイトルを防衛することだ。過去4人の日本人王者がラジャで防衛したことはなく、実現すれば史上初の快挙となる。
「そうしないと本物にはなれない」とT-98は言う。
「まだ未定ですが、10月9日にラジャダムナンで防衛戦を行う計画を進めてもらっています。向こうでタイ人を相手に防衛戦が出来るなら最高です。タイ人トレーナーからは、タイでやるのは危ないから日本でやる方がいいと言われたんですが、僕がどうしてもやりたいと言いました。今は協力してくれて、いろいろと教えてくれています。
3年くらい前に、1年間タイのジムに住み込みで練習して、試合にも出ていたことがあるんですよ。それでタイにも慣れている部分はあります。でも1年くらい行ってないので、試合が決まったら試合前に感覚を取り戻すために行きたいと思います。万全を期して臨みたいですね」
あえて茨の道を選択したT-98。日本人初の快挙達成に期待したい。
関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「歴史的快挙、T-98が史上6人目の外国人ラジャダムナン王者に」
・過去のMVP選手一覧
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