【コラム】グローブタッチは是か非か
世界中に広がったグローブタッチ
近年、プロボクシングは認定団体が増え、また、キックボクシング、ムエタイ、MMA(総合格闘技)などは興行団体が増え試合が増えたせいか、以前よりグローブタッチをよく目にするようになった。(文:格闘技研究家 大森敏範)
私の言うグローブタッチとはラウンド開始のゴングが鳴り試合が始まってから、対戦相手と「よろしく」とばかりにグローブをタッチする行為である。全てのラウンドの始まりと終わりに行う選手もいるほどだ。
そもそも、両選手は試合開始前にレフェリーからリング中央に集められ、セコンドと共に簡単なルール説明と注意を受け、最後に「お互いクリーンファイトで戦うように」「正々堂々と」「グローブを合わせて」、外国人レフェリーなら「Shake hands」「Touch gloves」「Good luck」などと声を掛けられグローブタッチをしている。このグローブタッチには相手選手への「よろしくお願いします」という敬意と親睦の意が込められているはずだ。武道の試合での「お互いに礼」にあたる。
戦いの前の挨拶であるグローブタッチを済ませてコーナーに戻り、ゴングが鳴らされ、戦いが始まって再びグローブタッチをする必要があるだろうか?
私は以前から疑問に思っていた。中には相手選手の不意打ちを警戒し、へっぴり腰になりながら目一杯手を伸ばしてグローブタッチをする選手、相手のグローブ目がけてジャブを打つ選手もいる。ルールだと思ってやっているのだろうか。ゴングが鳴ってからのグローブタッチは、どんな格闘技のルールにもない。また、クリンチになりレフェリーが「ブレイク」をかけた後、試合を再開するたびにグローブタッチを繰り返す選手、ダウンした相手が立ち上がり、試合を再開した時にグローブタッチをしている選手も見たことがある。
そもそもグローブタッチは、スパーリング時、ゴング直後に「宜しくお願いします」の意味で用いられる。スパーリング前にレフェリーが中央で説明や握手させることがないためだ。
10年ほど前に当時の世界チャンピオンに話を聞いてみた。「何故、毎ラウンドの始まりと終わりにグローブを合わせるのか?」と。「ジムでのスパーリングの癖でルーティンワークになっている」という答えが返ってきた。
一方、グローブタッチにつき合わず、いきなり殴ったり蹴ったりする選手もいる。これは反則ではない。秒殺KOにつながったケースも過去に多々ある。かつて日本一のスパルタジムとして名を馳せたトクホン真闘ジム(2014年閉鎖)の壁には「ゴング後のグローブタッチ禁止」という貼紙があったと関係者から聞いた。
ボクシングで試合中のグローブタッチは禁止されている
プロボクシングでは、最終ラウンド開始前に両選手は握手(グローブを合わせる)をすることになっているが、「これ以外で試合中に握手をしてはならない」とルールに定められている。プロボクシングではラウンド中にグローブタッチをしてはならないのだ。
なぜ、レフェリーが厳しく注意をしないのだろうか。
イーファイトがJBC(日本ボクシングコミッション)に質問をしたところ「最終ラウンド開始前以外の握手は厳密に言うとルール違反に抵触するが、減点するほど悪質な反則ではないし、試合の流れを止めてまで注意するものではないとされている。ただし、1Rの中で3回、4回とやるようであれば注意の対象となり、注意してもやめずに続けるようであれば減点となることもありうる。
ただし、最終ラウンド開始前以外でグローブタッチ、または抱擁などの行為を試合中にして、相手がそれをするフリをして出したパンチでKOされても、反則とはならない」という回答があった。
ボクシング憲章第1条
プロボクシングの世界で、俗にRule Number One(ボクシング憲章第1条)と呼ばれているフレーズが「Protect yourself at All Times(いついかなるときでも自身を防御すべし)」である。試合前のレフェリーの注意の時にもよく使われる。
2011年9月17日に行われたフロイド・メイウェザーとビクター・オルティスのWBCウェルター級世界戦。オルティスの故意のヘッドバットで試合は中断。
レフェリーから減点を命ぜられ試合が再開されるかされないかの微妙なタイミングで、謝罪のハグをしてきた無防備なオルティスに対し、メイウェザーは左フック、右ストレートのコンビネーションを決めダウンを奪い、そのまま10カウントを聞いた。
▶︎次ページはメイウェザーvsオルティスのKO動画、そしてグローブタッチ是非の意見
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