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【王者たちのデビュー戦】井上尚弥が衝撃KO勝利と最速での世界宣言、そしてモンスターの由来とは

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2020/05/13(水)UP

井上尚弥のプロデビュー戦は12年10月2日。1Rからボディを利かせダウンを奪う(提供:Bobby/ボクシングモバイル)

 王者、強者たちのデビュー戦に焦点を当てるシリーズ。第2回目は、いま大注目のプロボクサー、世界三階級制覇王者の井上尚弥(27=大橋)のプロデビュー戦を振り返ってみたい。

 井上は小学校1年からボクシングをはじめ、高校ではインターハイ、国体、全日本選手権を制覇するなど、高校生では日本ボクシング史上初の7冠を獲得。卒業した12年の4月に19歳になった井上はプロに転向。「強い選手と戦う。弱い選手とは戦わない」という井上からの条件があり、大橋会長は了承。井上は大橋ジムと契約した。

■モンスターの由来

井上尚弥の19歳のプロデビュー会見。6戦目で世界を獲ると宣言=12年7月

 今でこそ「モンスター」の異名に遜色のないスケールを持った井上尚弥だが、プロデビュー当時は誰よりも本人が、それにむず痒い様子だった。「モンスター」の由来は所属先である大橋ボクシングジムの大橋秀行会長に対する「形式化された質問」だった。

 それ以前から大橋会長と契約したエリートアマ選手には、記者会見で「選手時代、“150年に一人の天才”と称された大橋会長から見て、今回の選手は何年に一人の逸材ですか」と聞かれるのは決まり文句のようになっていたのだ。だからこそ井上と契約した際も、大橋会長は「待っていました」と言わんばかりにこんな言葉を返したのだ。
「井上君からは過去の天才を超えた“怪物”の印象を持ちました」この怪物がやがて世界戦へと進み、英語の「モンスター」となった。

井上尚弥がデビュー戦で相手をマットに沈めKO勝ちした瞬間(提供:Bobby/ボクシングモバイル)

 実際、井上のプロモーションにおいてこれは効果てきめんで、同年10月2日のプロデビュー戦に至るまでに注目度をグイグイと上昇させていた。会場の後楽園ホールは超満員。井上は49.0kg契約級8回戦に挑んだ。相手はフィリピン王者で東洋太平洋ミニマム級7位のクリソン・オヤマオ(フィリピン)。試合での井上は今よりもアマチュアボクシング時代の名残が多く、スウェーやステップで下がることもハイテンポに織り交ぜながら、KO負けのなかったフィリピン人王者を技術的に翻弄。初回に右のボディストレートでダウンを奪うと、第4ラウンドに鮮やかな左ボディでKO勝ちを収めた。
 モンスターの自覚はなかった男のデビュー戦。だが大物の片鱗は存分に感じさせるものだった。

14年には井上尚弥は世界王者に。宣言通り、井岡を抜き日本男子で6戦目と言う最短試合数記録で世界を制した

 試合後のインタビューで井上は、プロデビュー戦について「けっこう、リードも当たって、自分のペースで行けてたので、行けるかなと思いました。あとは倒し方次第だなと思って、ちょっと硬くなってしまいました」と照れ笑い。そして、プロでやっていけると手応えは掴んだのではという問いに「まだまだですね。これでは世界6戦目なんて言ってられないので、これからもっともっと練習して、決められた試合を課題残さず頑張りたいと思います」と答えている。

 井上はプロデビュー戦の3ヶ月前に開かれた記者会見では井岡一翔(井岡)が持つ日本人男子の世界王座・最短奪取記録(7戦目)の更新を宣言、6戦目での世界タイトルを目指すとしていた。

■有言実行の6戦目で世界王者、8戦目では世界最速の2階級王者に

14年12月、生ける伝説ナルバエスから4度のダウンを奪いKO勝ち、世界最速の2階級制覇を達成した。

 その後、井上は4戦目で後に世界統一王者となる日本ライトフライ級王者の田口良一(ワタナベ)を判定で破り、日本タイトルを獲得。辰吉丈一郎の持つ日本王座・最短獲得記録と並んだ。
 そして6戦目となる2014年4月には宣言通り『WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ』でV5を目指す王者アドリアン・エルナンデス(メキシコ)に6R右フックでTKO勝ち。井岡の記録を抜き日本人男子最速となるプロ入り6戦目での世界王座獲得に成功した。そして同年12月の8戦目には12度目の防衛戦となるWBO世界スーパーフライ級王者のオマール・ナルバエス(アルゼンチン)に2RでKO勝利。二階級制覇達成で世界最速記録塗り替え、まさにモンスターと呼ぶに相応しいファイターとなって行った。

♢井上尚弥…1993年4月10日、神奈川県出身。27歳
身長165.0cm
 2018年5月、大田区総合体育館にて、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネルと対戦し、初回1分52秒TKO勝ちを収め、日本最速となる3階級制覇を達成。主要4団体の階級の最強を決めるWBSSに出場し、1、2回戦ともに王者、元王者らを下しKO勝ち、2019年11月の決勝では世界5階級制覇をしたノニト・ドネア(フィリピン)と対戦。激戦を制し判定で優勝した。

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