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【追悼】”キックの鬼”沢村忠が晩年に語った格闘技界から離れた理由、そして未来の子らへメッセージ

2021/04/02(金)UP

沢村忠さんは晩年、少年たちにキックボクシングを通じ、生きるために大切なことを教えた

 夜7時のゴールデンタイムに行われていたキックボクシング中継は視聴率30%を超え、昭和48年には三冠王の王貞治を押さえ日本プロスポーツ大賞を受賞。その活躍はアニメ「キックの鬼」としても放送され、国民的人気を誇ったキックボクサー沢村忠さん(本名:白羽秀樹)が3月26日に死去したことが明らかとなった。

 引退して格闘技界から離れた氏であったが、2010年前には子どもたちにキックボクシングの指導を行っていた。おそらくこれが格闘技等、メディアに出演した最後だと思われる。(2010年2月6日、Fight&Life誌  取材・長谷川亮)。

 沢村さんが指導を行っていたのは横須賀市で活動するキックボクシングサークル「サクシード」。トレーニングウェアに身を包み、現役時代と変わらぬスリムな体型、ピンと背筋が伸びている。「じゃあ、怪我をしないよう。一生懸命にやればカッコよくなって上手くなるからな」整列をして礼をし、沢村さんはそんな風に子どもたちへ声を掛け練習が始まった。

子どもたちにキックの指導をする沢村さん

「サクシード」はキックボクシング経験を持つ宮坂勇治代表が2007年8月にスタート。子どもたちに運動できる場を提供したい、体を使って直接コンタクトするような競技を子どもたちに経験してもらいたい――そんな思いから設立された。宮坂代表の依頼でボランティアで指導陣の一人として参加した。

 引退後、空手を教えることこそあった沢村さんだが、キックボクシングを教えることはなった。その理由を次のように言う。
「5歳の時からお爺ちゃんに空手を習って、僕は武道家としての生き方を大事にしてきました。キックを始めた時『武道を売り物にするな』とお爺ちゃんから勘当を受けて、現役を続けた10年間、一度も実家へ帰れませんでした。だから、家族は一度も試合を見てません。

 引退というのはその世界と決別するということですから、僕は武道、祖父が教えた生き方に従い、引き際というのも大事にしました。それにキックボクシングの攻撃というのは、危険な凶器と一緒です。10人とか、僕が人間性を把握できる範囲ならいいけど、当時目黒ジムだけでも練習生が600人いましたから、どういう人間か分からないのに凶器を与えるような、そんな無責任なことは僕にはできません」

 引退とはその世界との決別とキックから完全に離れたが、同時に世の若者たちを見て思うところもあった。
「今は若い子がコンビニの前で座り込んでものを食べたり、高校生が平気な顔でタバコを吸っていたりする。“個性・個人の尊重”だとも言うけど、人は社会の中で生きていて、社会には基本的な決まりやルールがある。それは守らなきゃいけない訳です。でも、今は親もそうやって育てられてないから、分からないし言う人もいない。でも“三つ子の魂百まで”じゃないけど、10歳ぐらいまでに身に付いたことというのは大きくなっても忘れない。だから小さいころからやっておかないとダメです。僕自身、5歳から空手をやってグレずに来ることができました」

 練習前と練習後、そして指導の中で沢村さんは技術だけでなく様々なことを子どもたちに語りかける。
「いきなり『一人で生きてるんじゃないんだぞ』とか言っても分かりませんから、『お母さんを大事にしろよ』とか『友だちに優しくしろよ』とか、そういう基本的なことを言ってます。そういったことから、自然に礼節だったり思いやりが身についていくと思うんです」と語った。

 そして本誌ではその大切さを語った(Fight&Lifeインタビュー全文)。最後に「気遣い・気配り・思いやり―中略―この3点セットは武道の基本です。それさえあればみんな和やかに、笑顔で会うことができるじゃないですか。それを子どもたちに覚えてほしい」とメッセージを送った。

 若者たちに思うところがあり、再び子どもたちにボランティアでキックを教ええはじめた沢村さん。生きるために必要なこと、それをキックの技術指導を通じてこれからの未来を託す子どもたちに伝えたかったのだろう。ご冥福を祈りたい。

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