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魔裟斗も驚いた最強ペトロシアンの失神KO負け! 佐藤嘉洋が”まさか”の理由を語る

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2021/10/19(火)UP

失神KO負けを喫したペトロシアン(ONE公式YouTubeチャンネル映像サムネイルより)

 10月15日(金・日本時間)にシンガポール・インドアスタジアムで開催された『ONE: FIRST STRIKE』メインイベントのフェザー級キックボクシング世界王座決定戦で、同級1位のジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)が同級2位のスーパーボン(タイ)に失神KO負けを喫した。

【フォト&動画】世界が震撼した戦慄の右ハイキック!あの最強ペトロシアンが硬直失神ダウン

 この衝撃ニュースは、世界を震撼させたばかりだが、その余韻はいまだに残っている。なぜ、世界一のディフェンス技術を誇るペトロシアンがKO負けを喫してしまったのか。2010年11月8日、『K-1 WORLD MAX 2010 -70kg World Championship Tournament FINAL』決勝戦で、ペトロシアンと対戦した佐藤嘉洋氏に分析してもらった。

ペトロシアンとライバルだった佐藤嘉洋氏が、敗戦を分析した(2008年記者会見時の写真)

 11年前にペトロシアンと対戦経験のある佐藤氏は、「自分が対戦した時は、『右の奥足を蹴ってリズムを崩すことができれば、左フックでKOできる』と小森(次郎)会長に言われていたんですが、パンチを当てるところまでに至らなかったですね。もう少し奥足を蹴っていって、ブアカーオ(・ポー.プラムック=タイ)を倒した左フックを当てていたら、どうなっていたか試したかったです」と当時を振り返る。ペトロシアンが、いまだに現役で、しかもトップ戦線に君臨していることが信じられないとも言う。

 しかし、その鉄壁な牙城も崩れることに。ペトロシアンがスーパーボンの右ハイキックで失神KO負けとなった。

「試合を見たときは、本当にビックリしましたね。まさか、あのペトロシアンが頭をマットに打ち付けて倒れるなんて。その姿に衝撃を受けました」と佐藤氏。だが、負けることは想定内だったとも言う。

「でも、ペトロシアンを破るとすれば、シッティチャイ(・シッソンピーノン=タイ)よりもスーパーボンだなとは戦前から思っていました。シッティチャイは、ペトロシアンと同じようにクラシカルなテクニックを持っています。シッティチャイとペトロシアンは、サウスポーのお手本のような試合をする選手なので、どちらかというとペトロシアンが有利かなと思っていたんです。対してスーパーボンは、遠目からダイナミックな攻撃を得意としています。番狂わせが起こすとすれば、スーパーボンの方で、ペトロシアンは負けるべくして負けたとも言えます」

 たしかにスーパーボンは、緻密で正確な蹴りを使うムエタイの世界において、思い切りのいい攻撃をする選手。ペトロシアンのような精密機械を破壊するには、彼のような異質のスタイルが相性としてはいいのかもしれない。

「スローでフィニッシュとなった右ハイキックを見ましたが、軸足を宙に浮かして勢いで蹴っているんですよね。ペトロシアンは見切りのプロですから、思っていた以上に蹴りが伸びてきたのかもしれません」と佐藤氏は分析する。試合では何回もスーパーボンがハイキックを蹴っていたが、すべてペトロシアンがブロックやスウェーでかわしていたため、完全に見切る自信があった可能性は高い。途中で軌道が変わったのだろうか?

「これは自分の考察ですが、もしかしたらスーパーボンは毎回蹴りを当てる場所がバラバラなのかもしれません。ムエタイのトップクラスは、みんな同じ場所を正確に蹴ってきますので、ペトロシアンは見切ることができる。でも、スーパーボンはビッグミットに蹴りを出すような感覚で攻撃をするため、どこに当たるかはその時によって違う。それで、ペトロシアンが距離を見誤ったのかもしれませんね」

 であるとすれば、ラッキーパンチならぬ、ラッキーキックなのか? 再戦したらペトロシアンが勝つのか?

「再戦することになれば、非常に興味深いですね。ペトロシアンがどんな分析をして、どんな対策を立ててくるのか見たいですね。でも、あれだけの完璧なKO負けを自分もしたことがないので、再戦で冷静に対策を立てて実行できるのか未知ではあります」とペトロシアンの巻き返しには疑心暗鬼だ。

 世代交代の波が、ペトロシアンに襲ってきているのだろうか。

「それは、間違いなくあるでしょうね。ペトロシアンが衰えたとは思いませんが、彼が階級下のタイ人を圧勝することができなかった試合を見て『あれ』と思ったこともありました。あとは今回ONEに出ている若い選手の試合も見ましたが、パンチの種類が増えて明らかに技術が進化していることを感じました。僕たちが現役の時代は、こぞってムエタイを習っていましたが、今はボクシングに技術を教えてもらう機会が増えています。フック、アッパーにしても、様々な角度で打つ技術が目立っています」

 その流れの中で、アンディ・サワー(オランダ)が引退を表明したのは偶然ではないのだろう。

グレゴリアンと対戦したサワー。これが最後の試合になるのか?©️ONE

「サワーと僕は、じつは縁が深いんです。彼が初来日する際、じつは全日本キックボクシング連盟で僕と試合をすることが決まっていたんです。でも僕が肝臓を痛めてしまい、流れてしまいました。K-1でも戦いましたが(2007年4月4日=判定負け)、東日本大震災の年にシュートボクシングで対戦しています(2011年4月23日=判定負け)。素晴らしいファイターで、同じ時代を戦ってきた仲間だと思っています。強い選手がたくさん出てきていますので、安心して休んでくださいと伝えたいです」と佐藤氏は感慨深げに語った。

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