【KNOCK OUT】挫折から1年、鈴木千裕が兄・宙樹との同時戴冠を目指す
2月11日(火・祝)東京・大田区総合体育館にて開催される『テレ・マーカー Presents KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.1』。本大会の目玉として行われる『無法島Presents KNOCK OUT 64kg GRAND PRIX』に出場する鈴木千裕(20=クロスポイント吉祥寺)のインタビューが主催者を通じ届いた。
鈴木のトーナメント1回戦の相手は、自ら指名した与座優貴(橋本道場)。与座は極真空手の第6回世界ウエイト制軽量級優勝の実績を引っ提げキックボクシングの世界に入り、現在まで7戦7勝(3KO)と快進撃を続けている。鈴木は「20代対決で、無敗同士で、昔から意識してる与座選手とどうしても戦いたかった」と与座との戦いを熱望。「動画は100回以上見ている」と研究も徹底し「与座選手の蹴りは速いですけど、自分のパンチの方が速い。今の考えでは1RKOできると思う」と自信を見せた。
与座戦の先のイメージを問うと「今は与座選手との1回戦に全部集中」としながらも、「準決勝は西岡蓮太(龍生塾)選手、決勝は古村匡平(FURUMURA-GYM)選手が来る」と予想。「全員20代の選手を自分が倒してベルトを獲り、新しい世代、新しいKNOCK OUTを自分が引っ張っていく」とストーリーを描いた。
2019年8月の「REBELS.62」で鮮烈なキックボクシングデビューを見せた鈴木は現在までキック3戦3勝(3KO)。華やかなビクトリーロードを歩んでいるかに見えるが、過去には大きな挫折を経験している。
3歳から伝統派空手を始め、中学時代に総合格闘技へ転向。17歳でプロデビュー後、19歳でパンクラス・ネオブラッド・トーナメント優勝と着実にキャリアを積み重ねていた。パンクラスではフライ級(57kg)を主戦場としており、毎回12キロもの減量を行っていたという。そのため栄養士の専門学校の調理実習でも味見以外食べることもできず「減量期間は毎日が地獄」という日々。階級アップを何度も考えていたが、試合に勝つと「もう1回は大丈夫」と思い直してしまったという。
しかしそんな日々は鈴木の心身を徐々にむしばみ、いつしか心身のバランスを崩すように。「試合が終わると食べても食べてもお腹がいっぱいにならなくて、弁当を5~6個、気持ち悪くなるまで食べ、今度は罪悪感に襲われて戻す」という悪循環を繰り返し、「生まれて初めて『死にたい』とまで思った」と追い詰められたという。
20歳前後のまだまだ成長の余地を残す肉体はさらに大きくなり、最大で15kgもの減量が必要になるほどに。結果、2018年12月についに鈴木は減量に失敗してしまった。「下剤を2回使っても全然体重が落ちない。母親に『計量オーバーしたら罰金とか大変だと思うけど、死ぬぐらいなら水分を摂って』とまで言われたけど、水を飲まなかった」という鈴木は、秤に乗るも2.8kgオーバー。多くのファンから「プロ失格」という非難を浴びることになってしまった。
精神的に追い詰められ、1週間は引きこもったという鈴木だが、意を決してSNSに寄せられた全てのコメントを読むことに。多くの非難だけでなく激励も目にした鈴木は、改めて対戦相手に会い謝罪。そして契約上定められた、計量オーバー時に発生する負債をアルバイトの掛け持ちを経て全て返済した。
そんな鈴木に声をかけたのはクロスポイントの山口元気代表。強い打撃を持ちながら寝技で負けている姿を見ていた山口代表は「階級を上げてキックやるか?」と勧誘。鈴木は二つ返事で転向を決めたが、その時鈴木の脳裏にあったのは、兄・宙樹の姿だった。
「お兄ちゃんはみんなが見ていないところで助けてくれる。一番きつい時に『千裕は絶対にチャンピオンになれるからもう1回やり直せ』と守ってくれた。選手としても兄としても尊敬している」と、兄の優しさ・頼もしさを語る鈴木。いつか宙樹と共にベルトを巻いて、リング上で写真を撮ると決めている、と鈴木は今胸に抱いている夢を語った。
大きな挫折を味わい、新たな夢に向かい歩を進める鈴木。このトーナメントを制し、兄とともに新時代の旗手として名乗りを上げることができるか。
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