37歳になった青木真也「負けても後悔しない」「いつ辞めたっていい」理由を語る
5月9日(土)に誕生日を迎え、37歳になった元ONEライト級世界王者・青木真也が現在の思いをONE Championshipのインタビューに答えた。
今年4月17日、新型コロナウィルスで緊急事態宣言の中、開催された無観客のテレビマッチ「Road to ONE:2nd」では、日本の柔術界のトップ選手の世羅智茂とグラップリングで戦い、試合後のマイクでは「いつ死んだっていいんだよ、いつ辞めたっていいんだよ。死にたくねぇ、負けたくねぇんだったら、ずっと家にいろ。でもな、生きるってそういうことじゃねぇんだろ。日々いやなことと向き合って、クソみてぇな世の中と戦っていくんだ。生きるっていうのは目の前にあることと戦うことだ」と咆哮し、話題を呼んだ。
緊急事態宣言後も、感染対策をしながら変わらず練習を続けていると公言していた青木。今回のコロナ自粛では「苦労はしていません。僕自身が全く変わっていないから。大切なことは、自分で考えて動くということ。そういう話だと思います」とマイペースに語る。
37歳になった今、やりたいことは「とにかく、試合がしたい。その中で、単純にコツコツやって、自分の物語を見せていこうと思っています。勝つことも失敗することもコンテンツに繋げていける、その自信はあります」と試合を中心に青木自身の物語を見せていきたいと言う。
その物語とは「感情を揺さぶるものです。ただ試合をしているだけではなく、より多くの人の“自分ごと”になるようなものに、その“物語”がなればと思います」という。
それは具体的にはどう言うことなのか、インタビューアーが青木の試合について「全試合で感動している。中でもクリスチャン・リーとのタイトル防衛戦(2019年5月17日/シンガポール)が強く心を揺さぶられた」と語ると
「事前に感情を揺さぶる “作り”があります。僕は誰よりもその作りを大切にしてやっています。敢えて言うと、誰一人も力を貸してくれない中で、インタビューだったり、記事を自分で持ち込んだりしてやってきた訳なので。それをやってきた中で、自分の全ての試合に感情を揺さぶられたって言うのは、僕の勝ちですね。誰よりもそこに意識や価値を置いて、そこに美意識を持ってやってきたから。」
青木は昨年3月31日、ONEチャンピオンシップの日本初大会のメインでライト級世界王座を獲得。大会の会見後では、青木を兄の様に慕う20歳のクリスチャン・リーを挑戦者として逆指名し、大きな話題となった。そこでもファン、関係者が揺さぶられた。
しかし結果は5月17日のシンガポール大会の防衛戦では、序盤から主導権を握り、リーから一本を決める寸前までいったが、まさかの逆転TKO負けを喫しわずか1ヶ月半で王座陥落する。
これについて青木は「3月31日の試合で王者になったばかりなので、やらなくても良い試合ともいえるでしょう?」と青木は問い、「しかし、あの試合は自分の見せたいものは作れたと感じています。全ての試合も結果がどうであれ、後悔の気持ちはあまりないです。(自分の世界観を)ちゃんと作れてきたと思うので。」と、確かに格闘技的、競技的には、そんなに急いでやらなくても良い試合だが、彼は全てを”揺さぶる”作品作りとして行っている。
「そう言う意味で、あの試合は自分の見せたいものは作れたと感じています。全ての試合も結果がどうであれ、後悔の気持ちはあまりないです。(自分の世界観を)ちゃんと作れてきたと思うので。」と語った。
前述した今年4月の試合で「いつ辞めたっていい」と叫んだ青木。しかし「引退って言うのは、僕の概念では、極論、存在しません」とも語る。その理由は「スポーツ選手のセカンドキャリアみたいな言葉があるじゃないですか。それは“選手生活が終わったら、生まれ変わる”みたいな世界観ですよね。僕にはその考えはない。試合をしなくなったら、日常を切り取ったものが、試合じゃなくて違う形で出す様になる。つまり、引退っていうのは“ただ試合をしなくなる”それだけのことです。だから、引退ということを特に考えたことはないです」と、格闘技の試合という表現ツールの1つが無くなるのみ。プロレス、文章、テレビの企画など、他にも様々な手法で自身の歴史を作り、表現していくのだ。
青木自身にしか紡げない”自分の物語”。37歳となった彼は、これからどんな感情に響くものを見せてくれるのか。
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