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【ムエタイ】WINDY日本代表が敵地タイで奮闘も、日本の2勝4敗

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2012/04/07(土)UP

 4月7日(土・現地時間)タイ南部の都市・トランにて、ムエタイ興行『スック ワン ピンヨン ソー デェダムロン』の日・タイ対抗戦が開催された。

→プロモーターのデッダムロン氏(左)

 日本代表としてWINDY Super Fightで活躍する石井一成(TEAM WARUGAKI)、福田海斗、福田真斗、土屋邦登(いずれもキング・ムエ)の4名、またタイを拠点として活躍するユウ・エクシンディコンジム(大田原友 亮)、トラ・エクシンディコンジム(大田原虎仁)の計6名が出場した。

レポート:写真=シンラパムエタイ・早田寛

「スック・ワンピンヨー、ソーデッダムロン」
2012年4月7日(土・現地時間)タイ南部・トラン県、パーリアム郡バントゥンヤーン地区バントゥンヤーン市場特設リング
全17試合:推定観衆4000人

  遠征試合が行われたのは、バンコクより南に700kmのトラン県パーリヤン郡。これまでバンコク中央や近郊スタジアムで遠征を重ねてきたWINDY選抜チームだが、南部トラン県への遠征は初めての事だった。

今回は立川KBAでトレーナーを努める元王者デッダムロンの凱旋興行として、生家のあるトラン県パーリヤン郡で、日本の教え子とタイ勢との対抗戦という企画で開催された。

  タイ現地のムエタイファンの間では“バンコクの新人戦よりも地方都市の方がレベルが高い”などとも言われているが、実際にはどうなのだろうか。

  ここはテロが盛んな深南部から直線で150kmほど離れているため、そちらの心配はしなくて良いものの、試合4日前の4月3日、トラン県と隣接するソンクラーン県ハジャイで自動車に仕掛けられた爆弾が爆発し3人の死者が出た。

  だからか会場は実弾入り自動小銃を構えた多くの軍や自警団に守られ、異様な雰囲気の中の進行が続いた。


▼第7試合
○ナオト・ウォーワンチャイ(=福田真斗/キング・ムエ)
判定
●クンタイ・スックノーン(タイ)

 南部の住人には未知だった日本人ムエタイ選手だが、真斗のワイクルーが始まると「おぉ、綺麗なワイクルーじゃないか」と歓声が沸く。トップバッターの真斗だが、そんな印象が良かったか、試合前レートもイーブンの状態で開始。

 初回、クンタイは高い蹴りを当ててきたが真斗はローキックを返す。クンタイの方が高い蹴りも多く、初回は若干クンタイペース有利のレートで終わる。

  だが2Rからは真斗のローが加速しミドルキックにもつないだ。相手のクンタイは当日8時の朝計量で3時間目にしてようやく契約32kgにパスしていたためか、テンポの早い真斗の攻撃に早くも戸惑っているかのようにも見えた。

 3Rに入り、クンタイはやはり組んでくる。打撃で不利ならば組んでくるという流れは、ここタイ南部でも同じようだ。だが真斗は組んでからのヒザ蹴りにも 長けている。真斗より10cmほど身長が高かったクンタイだが、真斗は体勢を上手く捌き、2回ほどクンタイをこかした。ここでイーブンに近かった賭け率が 一気に真斗有利15-1まで開く。

  4R、クンタイの猛反撃に備え真斗は前蹴りで距離を取る流れになるのかと思えば、真斗はここからワンツー・ローでブンタイをコーナーにつめる。所属のキン グムエ・佐藤孝也会長が「ムエタイの賭け率など気にしないで、自分の攻めをみせて欲しい」という言葉のように、真斗は最後までクンタイを攻め立てた。

→佐藤真斗(左)と元全日本フェザー&NJKFライト級王者の佐藤孝也会長

 最終5R、終了30秒前になって、真斗はここでやっと前蹴りで距離を作り、試合終了に備えた。結果はもちろん真斗の判定勝利だ。日・タイ対抗戦、初戦からの敗退にタイ勢、及び会場も動揺を隠せないような様子だった。


▼第8試合 38kg契約
○プラブスック・クンルットバティー(タイ)
判定
●クニト・ウォーワンチャイ(=土屋邦登/キング・ムエ)
(結果:プラブスック判定勝利)

  2番手の邦登は昨年8月にサラブリ県アディソンスタジアムで僅差の判定負けを記している。あの時リング上でうっすらと悔し涙を浮かべていたが、今回はその雪辱を晴らす事ができるだろうか。

  プラブスックは初戦で真斗の試合を観戦し、息高々になっていたからだろうか。開始ゴングと同時に鋭いハイキックで挨拶してきた。

  これが邦登の頬に当たりパチンと大きな音を立てた。冷や汗ものだったが邦登は何事もなかったの様にローキックを蹴り続ける。

 2Rに入り邦登のローキックは軽快にあたり、プラブスックの太ももも赤く染まってきたが、同時にプラブスックもミドルの数を増し、時おり邦登の脇腹に食 い込む場面もあった。この2R終盤に邦登はハイキックを2発食らってしまう。バンコクの試合の様にポイントを取って勝つという闘い方ではなく、明らかに倒 す事を意識した闘い方だった。

  邦登のローキックは変則的でスピードもあるし、確かにタイ人選手を苦しめてはいるが、それでも、もう少しミドルキックも多様して欲しかった。この試合は高 い蹴り数の差ということで明暗がついてしまったが、邦登も得意のローキックに勝るほどの高い蹴りを身につければ勝てる相手だったように思う。邦登の更なる テクニシャンぶりに期待したい。


▼第9試合 38kg契約
○サミンダム・コー.キッティパン(タイ)
判定
●イッセー・ウォーワンチャイ(=石井一成)

  前回のラジャでは僅差でドローとなったが、その後日本帰国し、さっそく猛特訓が始まった。立川KBAでの長期合宿やその間に3月18日、B-FAMIL NEO主催興行でWINDYスーパーファイト40kg級王者に輝きWINDY3階級を制覇。しかしそんな石井一成でさえも、今回こそは本場でのムエタイに 勝たなければならないという意志が強く感じられた。

  初回、サミンダムもいきなりハイキックを放ってきた。

  サミンダムは一成に比べ10cmは身長が高く、長身を生かしたミドルやハイキックでまとめてきた。だが一成は怯むことなくローキックを当てていく。

  2Rに入り、ここからサミンダムは早くも組んできた。普通は試合中盤からスタミナ合戦の意味合いも含め組んでくる事が多いが、完全に倒しにかかってきてい る証拠だ。一成は組まれるとヒザの数では圧されていたが、気合で体制を立て直しローキックを蹴り込む。

  3R、それまで圧されていた一成だが、ここで何かが吹っ切れたかのように動きが良くなる。ワンツー、ローキックでサミンダムをロープ際に追い詰めるも、サミンダムも必死にヒザを突き立ててきた。

 4R、再び組んだ接近戦に縺れこむ。サミンダムもスタミナが切れ始めているのは明確だったが、ここから一成の後ろ側に回り込んだり、打つ蹴る以外にも体の捌きで一成を征圧していく。

  最終Rも同じような状態が続いたが、一成がこの場面を奪回する事も難しく、判定負けを喫した。

 石井一成の打撃は日本国内ではピカイチのレベルだが、ムエタイでは接近戦での攻防時間が長いため、組んだ時の攻防に磨きをかければ、タイのリングでも良い結果に繋がるだろう。更なる変貌に期待したい。


▼第10試合 44kg契約
○シンクノーン・シッジャブーン(タイ)
TKO 4R
●カイト・ウォーワンチャイ(=福田海斗/キング・ムエ)

 前回今年2月のルンピニー戦では、ギャンブラー側の理由に付き合わされて僅差で負けてしまったが、あのようなムエタイ判定の難しいところは気にせずに、今回は自分の攻めを大いに見せ付けてほしいものだ。

  今回、海斗には作戦があったようだ。海斗は初回から距離を詰め、組んだ距離での攻防に挑んだ。タイ人選手で自分が得意な距離に持ち込もうと、無理やり組ん でくる選手をたまに目にするが、日本人の海斗自身がそれをやっている訳だ。これにシンクトーンは前蹴りで距離を取ろうとつとめる。

  2Rに入り、海斗はなおも組み付いていった。首相撲合戦は時の運で勝負が決まるというより、はっきりとした攻防が目に見え、互いの実力差を競おうというも のだ。シンクノーンも直ぐに状況を察知し、海斗との首相撲合戦に挑んできた。互いのヒザ合戦では負けていなかった。むしろ順調といえたが・・・

  だが3Rに入り、シンクノーンは海斗の体勢の癖を見抜いたのか、出頭を前蹴りで突き海斗をこかし、そして組んだ状態からの捌きなどで海斗の間合いをことごとく殺していく。

 一瞬の時間ではあったが、このシンクノーンの捌きが見え始めたころから、場内はシンクノーン有利の色が一気に濃くなりはじめる。

  4Rに入り、この試合形勢が変らなかったため、レフリーは試合を止めてしまった。先日のWINDY主催興行では3階級制覇も成し遂げ、新たな気持ちで挑ん だ海斗だったが、タイ南部ムエタイのレベルの高さに涙をのんだ。しかしほんの少し闘い方を変えれば違う結果もあったかもしれない。今後も試行錯誤し、本場 で内容の濃い闘いを見せてほしい。


▼第11試合 44kg契約
○スラサック・ソータウィーン(タイ)
判定
●トラ・エクシディコンジム(=大田原虎仁/B-FAMILY NEO)

  初回、両者とも動きはなし。2Rになり、ようやく両者の攻撃が交差する。虎仁の得意な蹴りはローキックだが、スラサックのローキックも横で見ていて、かな りの重さが伝わってくるほどだ。このローキックの相打ちに付き合っていたら、後半にしんどくなるだろう。「相手のローキックはしっかりカットしてから自分 の攻撃へ繋げ」とセコンドから指示が飛ぶ。

  3Rに入り距離が詰まる。スラサックが首相撲に持ち込んでいったのだ。ここで虎仁の手数、足数が減ってきた。朝の計量でキツそうな表情を見せていたが、そ ういった事も関係しているのだろうか。そして距離が離れた一瞬に、さらに重いローキックが飛んでくる。虎仁はここはパンチで応戦した。

  これまでも本場タイで何度もパンチでKO勝ちを見せている虎仁だけに、強打の一発が当たる事に期待したが、しかしスラサックは虎仁のパンチをスウェーでか わすなどし、その間にミドルキックも蹴ってくる。虎仁は、ここでワンツー・ローの攻撃を軸に前に出た。スラサックのテンカオが腹に突き刺さるなか、何も気 にせずに前に出た。

  最終Rには、この虎仁の前進に圧され、スラサックがコーナーに詰まる場面もあった。しかしここからKOパンチにつなぐ事ができず、終了ゴングを迎えてしまう。


▼第12試合 55kg契約
○ユースケ・エクシディコンジム(=大田原友亮/B-FAMILY NEO)
判定
●ジャムンペット・チョーヌッスマイ(タイ)

  今回の遠征メンバーの中では一番経験の多い、大田原友亮が締めとして挑む。思えば、この日WINDY選枝メンバーが闘ってきたタイ南部の選手達は、それま で彼らが闘ってきたラジャダムナンやルンピニーの新人戦出場のタイ人選手よりも、はるかにレベルの高い動きを見せていた。この日の闘いを見て、地元関係者 には「南部のレベルは、まだまだこんなものではない。もっと強い子供が大勢いる」という声もあったので最後まで侮れない。

  ときおりタイ国内のTVマッチなどにも出場している大田原友亮だけに、とんでもない相手を出してくるのでは、と思われた…。

  試合は初回、蹴りのスピード合戦から始まった。互いの蹴り数は多くなかったが、お互いがどのレベルの選手なのか、間合いの中での探りあいが始まっていた。 ジャムンペットが一発素早く当てると、友亮もすぐに蹴りを返す。この初回の攻防だけをみても、友亮側勝利に賭けるギャンブラーも出始めていた。まずまず だった。

  2R、友亮はミドルを蹴る合間にローキックを当てる。このローキックは有効ではあるが、相手の戦闘意欲を奪うほどのハッキリとした蹴り込みがないと、逆にその間にミドルキックなどを蹴らってしまい、不利に追い込まれるパターンも多い。

  だが友亮は、ジャムンペットの足が効いている事を察知すると、そこから一気に蹴り数を加速した。ここは地方ムエタイであって、ラジャダムナンやルンピニーよりも、ひと周りリングも小さい。必然的に距離も詰まりやすかった。

  3R、足が効いているジャムンペットは組み付いてくる。状況を奪回しようと必死だが、そこで友亮は離れ際の一瞬に左ハイキックを決めた。これがジャムン ペットの頭部に命中し、ジャムンペットは腰を落とす。だが直ぐに立ち上がってきたので試合再開だ。この段階で目に見えて友亮が勝っていたが、4Rからの ジャムンペットの組み付きもかなりしつこかった。

  友亮は一時は首相撲に付き合ったが、体勢の捌きでジャムンペットの挽回の場を潰していく。最終Rもそれまでの形勢を崩すことなく試合終了した。振り返ってみれば、トラン勢が用意してきた選手は、皆それなりの実力者ばかりだった。

  そしてどの選手も皆、日本人選手よりも若干体格が大きかった。これまでであれば普通は日本人のために若干小さなタイ選手が用意される事が当たり前の様だっ たが、今回の日・タイ対抗戦ではタイ側の負けられない気持ちというものが、そんな細かな所からも伝わってきた。

  色々な事を思った今回のWINDYトラン遠征であったが、日本側のレベルが急成長しているのはタイ選手や関係者らも敏感に察知してか、タイ側も実力のある選手を揃えてきたということだろう。

  試合内容では首相撲が勝敗のキーポイントな様に思えた。これまでは「首相撲対策として~」という事で、“首相撲をいかに回避するのか”という考え方も大き かったかもしれないが、これからは首相撲に真っ向から飛び込み、同じ闘い方でもタイ人に競い勝つことが出来なければ、日本人が得意とするパンチ攻撃やロー キック攻撃も武器としては薄いものになってしまうという事だろう。

  子供達には険しい道のりかもしれないが、日々の練習とこうしたタイ遠征を重ねていれば、いずれタイの壁を超えられる日もくるだろう、とそんな事を思った大会だった。

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