【ムエタイ】快挙!福田真斗、タイのワンデートーナメントで優勝
「スックワン ソー・デッダムロン+チェットトゥンワー タイ・日本対抗戦」
2013年3月30日(土・現地時間)タイ・トラン県パリエン郡バントゥンヤーウ地区特設リング
タイで活躍する選手の育成・輩出をコンセプトに、タイに最も近いと言われるジュニアムエタイ大会「MUAYTHAI WINDY SUPER FIGHT」(以下WINDY)。そのWINDYの最精鋭選手6名が、3月30日(土・現地時間)タイ・トラン県で開催されるムエタイ興行『スック ワン ソーデッダムロン+チェットトゥンワー』に出場した。
タイ・アディソンスタジアム75・77ポンド王者の福田真斗(ふくだ・なおと/キング・ムエ)と大崎孔稀(OISHI-GYM)は日本代表として、南部ナンバーワンを決める38kg級ワンデートーナメントに出場。ルールはヒジあり3分3R。優勝するには、1日に3試合を勝ち抜かなければならない。果たして日本勢はどのような闘いをみせるのか。
▼ムエロープ38kgトーナメント決勝戦
○ナオト・エクシディコンジム(=福田真斗/キング・ムエ)
判定
●ペッシーヌワン・ソースポン(タイ/トラン県出身/14歳)
※ナオトがトーナメント優勝
「おめぇーは日本人相手に、なにやってんだ!」トーナメント2回戦で真斗にKO負けしたばかりのセンモラコット陣営では揉めていた。なかには頭を拳で小突く大人までいる。無理もない。これまでに50戦を闘ってきたというモラコットだが、日本からやってきた真斗にワンパンチでKOされてしまったのだ。
このトーナメント2回戦の3R目、距離が詰まったところで真斗の右ストレートがモラコットの顎先にヒット。モラコットはそのまま大の字に倒れこむ。試合続行不可能とみたレフェリーはカウント8で試合を止めた。
真斗の闘いぶりにはタイ関係者も驚いていた。真斗はこの試合だけではない。トーナメント1回戦もKO勝ちしていたからだ。
試合開始間もなく高い蹴りの応酬で相手を揺さぶり、第2Rに距離が詰まったところ、テンカオを鳩尾(みぞおち)に刺し、一発KO勝ちだった。テンカオを食らったウィラチャイはしばらくリング上でもがいていたほどだった。
「あの日本の子は何者?」「侮れないなぁ…」というタイ観衆の声もちらほら。たしかに色白で“いかにも日本の男の子”といった感じの真斗がタイ人選手をKOしていく姿に皆が驚いていた。
決勝で対戦することになったのは戦績約100戦というペッシーヌワン・ソースポンだ。タイ国内でもイサーン地方(東北)に並び選手層が厚いと言われる、ここタイ南部で既に100戦を闘ってきたという実力者。
両者、これまでのトーナメント戦でのダメージもないのか、真斗とペッシーヌワン共に動きも早かった。まず距離の取り方に特徴があった。
相手に蹴りが届くか届かないかの微妙な立ち位置で向かい合う。そして自分の蹴りのリーチ内に一瞬でも相手が踏み込んでくれば瞬時に高い蹴りを放つ。大人顔負けの攻防だ。
ペッシーヌンもそれまでの相手とは違っていた。慎重すぎるほど距離を取ってむやみに攻撃してこない。トーナメント初戦2回戦とKO勝ちしてきた真斗が相手だからか、慎重にならざるを得ないだろう。
3Rに入り、ここでようやく真斗のパンチが届く距離に詰まった。真斗が一、二発パンチを打つと、相手もすかさず組んでくる。
タイ人選手ならば組んだ時に滅法強いが、キング・ムエの選手も皆、首相撲に長けている。このタイの本場でタイ人選手と互角に試合運びが出来るのだから、大したものだろう。
組んだ状態で真斗とペッシーヌワンの細かいヒザが交差。そして真斗はちょっとした隙を見極め、相手の足場を崩してさらにヒザを入れる。
3R半ばまでは真斗は順調すぎるほど上手く進んでいたが、試合終了間際に組んだ体勢から相手に崩されてしまい、一度だけリングにひざまずいてしまった。ちょっとした動作が勝敗に結びつくムエタイで、このこかされた事はヒヤヒヤものであった。
だが試合の総合的な流れとしては、真斗の方が有利に進んでいた。判定に影響しやすい場内の賭け率も真斗側に傾いているではないか。初戦から決勝戦まで安定した闘いをみせてきた真斗への信用度というものだろう。試合終了ゴングが鳴る。この決勝戦に限っては、激しい打撃戦というよりは、互いのテクニックの攻防戦といった感じであった。
勝敗の判定は…レフリーは真斗の勝利を宣告。真斗はタイ南部での38㎏級ワンデートーナメント戦を勝ち抜き優勝を決めた。この日の観客も、まさか日本人が優勝するなどとは思っていなかった様で観衆も流石に驚いた様子だ。
だが真斗には、こうした敵地で勝ち抜く力があるのだと思う。キングムエの佐藤孝也会長は試合を振り返る。「ムエマラソンは初挑戦だったし普通の試合ではない。怪我も心配だったが日々の練習の成果だと思う」と語った。
真斗はこれでサラブリ県アディソンスタジアムの二階級のベルト奪取も含め、このムエマラソンがタイで3本目のベルト奪取となる。
とはいっても真斗にとって、まだ先は長い。これから体格が大きくなるにつれ、タイ全土からの強豪と闘わなければならない事になるだろう。だが、さらに佐藤会長が付け加えて言っていた「真斗の負けず嫌いは半端ではない。集中力もあるし、自分から音をあげる事もなくとことん練習する。だから一つ一つ確実に成長していくと思う」そんな言葉が何とも頼もしく聞こえた。真斗がタイのメジャースタジアムで奮闘する日が、今から待遠しい。
▼ムエロープ 38kg契約 トーナメント1回戦第3試合
○トゥーサック・サックバントン(ラン県出/12歳)
判定
●コウキ・ウォーワンチャイ(=大崎孔稀/大石道場)
ムエタイ挑戦は2回目という孔稀だが、初回から飛ばしまくった。多くのパンチを決め、スタンディングダウンを取れるか!?というところだったが、相手のトゥーサックもしっかりと耐えた。孔稀のパンチが重たいことを悟ったトゥーサックは、やはり組んでくる。これまでの日本の試合ならば、組まれた状態が続けばレフェリーがストップに入るが、ムエタイではここからが長い。孔稀は本場ムエタイ選手との首相撲に挑む。トゥーサックが全体重を孔稀に預けロープ際まで圧し詰める。これがダメージとなるわけではないが見栄えが良くない事は確かだった。
だが2Rの後半になると次第に対処方法がわかってきたのか、孔稀の方がトゥーサックの体勢を奪いヒザ蹴りからこかす場面もあった。
最終Rに入る。ここまでは2Rに首相撲で攻めたトゥーサックが若干有利かと思われたが、全然逆転可能な範囲内だった。孔稀はここでセコンドの指示通りミドルキックを多発。パンチからミドル、ミドルキックからパンチと流れのよい攻めを見せる。だがトゥーサックも負けじと蹴り返してくる。ここで終了ゴングが鳴る。孔稀は相手に捕まれた時に、若干圧されていたことで判定負け。
それでも初回からの足を止めての互いの打ち合いは凄まじい光景であり、その孔稀の闘志を称え大きな拍手が沸いた。これまで日本で闘ってきたキックボクシングと今回のムエタイ、若干試合運びとルールに違いがあるので、こればかりは練習と試合での繰り返しで慣れていくしかないだろう。
今回のムエタイ参戦で孔稀の心の中に新たな目標が見つかったはずだ。次戦での勝利に期待したい。
▼第3試合 38㎏契約
○レイ・ウォーワンチャイ(=小林羅衣/立川KBA)
判定
●ペットムアンレー・ソーランマナー(タイ/サトゥン県出身/12歳)
タイでの試合は初めてだという羅衣だが、「全く緊張していない」という通り、開始からパンチとローで押しまくる。セコンドから「高い蹴りも出せ」という指示が出ると、直ぐにミドルキックやハイキックもヒットさせた。
2Rになり相手が組んでくる。このしつこく距離を詰めてくる圧力で、一時は相手の首相撲ペースに捕まりそうだったが、逆に相手の首を取ってヒザを見舞うなど奮闘した。
3Rになり、距離を取ってヒットアンドウェィに徹した。パンチの合間にヒジ打ち、そして離れた距離ではハイキックも決める。あと一歩でKO勝利かというところで終了ゴング。すね当てなしの試合は初めてだったというが、戸惑うことなく数々の蹴りをヒットさせた。組まれたときも相手の体勢(足場)をこかしてからヒザを決めるなど、一連の流れで技につなげた事が観衆からもウケが良かった。タイ2戦目が待ち遠しい。
▼第5試合 トラン県40kg級タイトルマッチ
○コウキ・エクシディコンジム(=山田航暉/キング・ムエ)
TKO 1R ※ローキック
●モンコンチャイ・ウィラバンポー(タイ)
昨年8月のタイ・サラブリ県アディソンスタジアムでの判定勝利時は、重いローキック主体で相手を圧倒していたが、今回は開始ゴングから高い蹴りを連打。この高い蹴りが良い威嚇となったか、その後の切れのいいローキックが数発決まる。この時、一瞬相手の足をかばう様なそぶりを見逃さなかった。
ここでセコンドから「ローを蹴り込め」と指示が飛ぶと、航暉(こうき)はローキックで畳み掛ける。大きなローが絶妙な角度でモンコンチャイの足に刺さると、相手はたまらずダウン。レフェリーはここで試合を止めた。航暉は南部トラン県の40kg級のベルトを巻く。去年のサラブリ参戦の時に見せたローキックは健在だった。
▼第6試合 トラン県45kg級タイトルマッチ
○イッセイ・ウォーワンチャイ(=石井一成/TEAMWARUGAKI)
TKO 1R ※右ストレート
●ダオプラスック・オーボート―、ゴッスコーン(タイ)
これまでタイで多くの試合を闘ってきた一成だが、今回は南部トラン県でのタイトルマッチに挑んだ。一成がワイクルーの最後に刀で対戦相手のダオプラスックを切るシーンを披露すると一成を睨みつけ場内も沸きかえる。ダオプラスックは地元選手として「ベルトは日本人には渡さない」という堅い決意が表情に現れていた。
一成は開始ゴングと同時にローキックでアタックをかける。ダオプラスックも素早いミドルキックを軸に前に出てきた。初回から闘志全開の両者だが、一瞬距離がつまりパンチの打ち合いに移行したその時、一成のワンツーパンチがダオプラスックの顎を捉えた。そして返しの左を振ると、ダオプラスックは前のめりに転倒。カウント6で立ち上がってはくるものの、千鳥足で目線も定まっていない。
レフェリーは続行不可能と判断し一成のTKO勝ちを宣言、トラン県45kg級のベルトを奪取した。これまで日本国内では数々のベルトを巻いてきた一成だが、タイでの試合では、あともう一歩のところで涙をのんだ結果が続いていただけに、今回のベルト奪取は大きな収穫だ。来年のこの大会では、一成は防衛戦という形で試合が組まれることになるが、タイ勢も更に強者を当ててくるだろう。
▼第11試合 49kg契約
○カイト・ウォーワンチャイ(=福田海斗/キング・ムエ)
判定
●ハンタレー・ルンポートン(タイ)
タイ南部のこの地区で、体重50kg前後のこの階級は層が厚い。去年の同大会では、そのレベルの高さに残念な結果に終わってしまったが、あれから多くの試合経験を積み、強い気持ちでこの試合に挑む。
初回は離れた距離からの互いの蹴り合いで試合が進む。海斗もハイキックやミドルキックを軸にハンタレーの侵入を防ぐ。この蹴り合いの攻防では海斗の蹴りのヒット数も目立ったため、ハンタレーは次第に組んだ接近戦に持ち込んできた。
タイ人選手は相手によってその都度、距離や闘い方を変えてくる。それだけ器用という事だ。だが海斗はハンタレーが距離を詰めてきた一瞬に絶妙なタイミングでテンカオを刺す。そして組んでからも相手の首を取ってヒザを連打。
4R中盤には、海斗は完全に主導権を握り、場内もギャンブラー同士で賭け金の支払いを始めた。要するに、もうこの時点で海斗が圧勝しているという状況だった。
5Rに入ってからも、海斗は前蹴りで相手と距離を取り大きなミドルキックを決めた。ここまでくるとハンタレーも自身の負けを認めるかのように失速しはじめ、ここで試合終了。試合は海斗が圧勝した。
去年はムエタイ特有の駆け引きの時点で、タイ選手にペースを奪われてしまっていたが、この日の海斗の闘いぶりは実に堂々としたものであり、スピード感ある技の数々をみせてくれた。
試合後にキングムエの佐藤孝也会長は「心機一転し、練習方法もガラリと変えてこの一年取り組んできた」と語った。海斗は今、大化けする時期なのかもしれない。次のムエタイ戦でも、その成長ぶりに期待する。
記事/写真:シンラパムエタイ・早田寛
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