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格闘技名勝負列伝 第4回 港太郎vs村上竜司

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MA日本キックボクシング連盟
「港山木ジム7周年記念興行」
1992年5月23日 東京・後楽園ホール

▼キックボクシングルール ヘビー級 3分5R
○港 太郎(港山木ジム)
判定3-0 ※49-48、49-48、50-47
●村上竜司(士道館/1991年士道館全日本無差別級優勝)

■キックボクシングvs空手の火ぶたが切られる!

 キックボクシングが強いか、空手が強いか? 今ではあまり語られることのなくなったテーマだが、1990年代前半の格闘技界では大きなテーマとして格闘技誌をにぎわせていた。

 1984年に誕生した、ボクシンググローブ着用で顔面パンチをありにした新空手(初期は勇気道という名称)。そして正道会館が、1988年の第7回全日本大会から再延長戦にグローブを着用して顔面パンチありのルールを導入したことで、「顔面パンチがあっても空手は強いのか?」という論争が巻き起こったのである。

 1990年6月30日、正道会館の全日本大会で三連覇を達成していた佐竹雅昭が全日本キックボクシング連盟の日本武道館大会に参戦し、前田日明との異種格闘技戦で名をあげたドン・中矢・ニールセンとキックボクシングルールで対戦。

 この当時、正道会館は極真会館とUWF(前田日明、高田延彦、藤原喜明などが所属していた格闘技色を打ち出したプロレス団体)に挑戦を表明するなどして話題になっており、佐竹の知名度は格闘技界でうなぎ上りの状態にあった。

 その佐竹が「顔面パンチがあっても空手は強いのか?」「キックボクシングと空手はどちらが強いのか?」というテーマにひとつの答えを出すとあって、ニールセン戦は大きな話題を呼んだ。そして、佐竹はニールセンを1RでKO。全ての格闘技雑誌の表紙を飾ることになった。

■「ヤツとの戦いは血みどろの戦いになるだろう」

 これを機に、空手団体および空手家たちが次々とキックボクシングへの挑戦を表明。空手家たちの挑戦が始まったのである。今回紹介する村上竜司vs港太郎も、この流れの中で行われたものだった。

 村上は、“極真の猛虎”と呼ばれ第1回全日本大会で準優勝を収めた添野義二が極真会館から独立し、館長となって創始した士道館のエース(余談ではあるが、添野館長自身もキックボクシングに挑戦したことがある)。士道館と佐藤塾(同じく極真会館から派生した流派)の全日本大会を制した強豪空手家で、格闘技界でその名を知られる選手だった。

 迎え撃つ港太郎は、MA日本キックボクシング連盟が売り出し中だった重量級のホープ。強いパンチ&キックに加え、ヒジとヒザ蹴りも使いこなす攻撃力のあるテクニシャンだ。村上は「ヤツとの戦いは血みどろの戦いになるだろう」と予告し、試合前から大いに盛り上がりを見せた。港は本来ミドル級だったが、この試合はヘビー級として行われ、港は77.11kg、村上は81.65kgと約4kgの体重差があった。

■港の猛攻に村上は執念で立ち続けた

 キックボクシングvs空手の対決にふさわしく、村上は空手衣を着用して決戦に臨んだ(途中で暑さのため道衣上は脱いだ)。まさに異種格闘技戦という様相であった。試合の見どころは特に3Rから。そこまで港がヒジ、ヒザの猛攻で強さを見せ付けていたのだが、村上がアッパーを決めて得意の左フックで逆襲に転じる。さらに4Rには「もう意識がなかった」という村上が、勝利への執念から頭突きを見舞ってしまう場面も。

 流血で顔面を血に染めながらも、最後までパンチを出して前進し続けた村上。容赦なくヒジ、ヒザを叩き込む港の強さ。両者死力を尽くした激闘はフルラウンドに及ぶ名勝負となった。村上は「空手界の恥になっちゃうからKO負けだけは避けたかった」と、気力で立ち続けていたことを試合後に明かした。

 のちにK-1やトーワ杯カラテ・ジャパン・オープン(優勝賞金500万円のトーナメント。グローブ着用の顔面パンチ、ヒジ打ちもありで体重無差別で行われた)などでド根性ファイトを見せ、“男・村上”と呼ばれ格闘技ファンのハートをわしづかみにした村上竜司の原点とも言える試合である。

 また港はこの後、MA日本ミドル級王者となり、シュートボクシングのエース吉鷹弘やK-1の金泰泳、ラモン・デッカーやマンソン・ギブソンといった海外の超強豪、そしてムエタイのチャンピオンやランカーたちと名勝負を重ねる名選手へと成長していった。

 理屈抜きの大激闘。ぜひ語り継がれていって欲しい名勝負のひとつだ。

写真提供/ゴング格闘技

 

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▼キックボクシングルール ヘビー級 3分5R
○港 太郎(港山木ジム)
判定3-0 ※49-48、49-48、50-47
●村上竜司(士道館/1991年士道館全日本無差別級優勝)

 

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