2023/11/27（月）UP
（最終更新：2023/11/27 22:40）

決勝、旗判定なく西尾（白）の勝利が宣告されると、佐々木（青）は苦笑い。セコンドの岩﨑大河（2023世界選手権270＋クラス王者）は〝アチャー〟

全日本空道連盟
『2023　空道全日本無差別選手権大会』
2023年11月19日（日）宮城・カメイアリーナ仙台（仙台市体育館）

▼決勝戦
〇西尾勇輝（大道塾大阪南支部）
延長　ポイント2－0
●佐々木龍希（大道塾総本部）
※本戦は両者ポイントなく自動延長。延長戦で、掴んでの打撃により佐々木に減点（対戦相手に1ポイント）1回、右ストレートにより西尾に効果（1ポイント）1回あり。

　空道（くうどう）は、道着と顔面防具を着用し、顔面へのあらゆる打撃、投げ、寝技によって闘う着衣総合格闘技である。

西尾（白）渾身の右ストレートをヘッドスリップですり抜け、するりと背後へ回り込む佐々木

　ただでさえ、空手・ムエタイ・日本拳法・柔道・レスリング・ブラジリアン柔術などの技術から、ミャンマーラウェイばりの頭突き、骨法でみられるような掌底打ちまで、幅広く自由に技術が展開されるわけだが、さらに、日本においては、国際大会に繋がる予選大会の実施の必要のない年度の秋季にかぎり、階級分けなしの無差別大会が実施されている（国際大会をはじめ、通常は身長センチと体重キロの数値の和＝体力指数によってクラス分けを行う体力別大会のみが実施されている）。

　この無差別大会においては「体力指数差が大きい（20以上ある）場合、体力差を埋める技術として、双方の選手に（コンビネーションの一環としての使用に限り）金的蹴りが認められる」という独自ルールが存在する。

　今回の大会は、2019年以来4年ぶりのその〝全日本無差別選手権〟であり、まさしく、自由（＝空）なやり方（＝道）のもと、通常の階級別の試合区分において最軽量級の佐々木龍希（168センチ、63キロ）が、スイスイと相手の攻撃を躱して背後に回り込んでは突き蹴りを叩き込み、投げては関節技に移行する、牛若丸のような闘いで階級の上回る選手たちを下し、決勝に勝ち進んだわけだが……。

鮮やかな上段回し蹴りをヒットさせた佐々木だったが……

　実は、この無差別大会のルールには「体力指数差があまりに大きい（30以上ある）場合、双方の選手とも組み合って立っている状態では一切の打撃を行ってはならない」という補足がある。セーム・シュルトがこの北斗旗無差別選手権に出場していた頃に、組んでのシュルトの打撃により“あまりに危険”と判断される事例が生じたことから追加された安全性維持のための一項である。

　佐々木とともに決勝に進んだ西尾勇輝は177センチ、88キロの体躯だったゆえ、佐々木との間に34の体力指数差があり、この「組んだら打撃なし」のルール下の試合となったわけだが、大きな選手に対抗するために、組んだ状態で頭突き・肘・蹴り……と波状攻撃を掛けて投げ技を封ずるという戦略をさんざん稽古してきたのであろう、佐々木は、組んだ瞬間、打撃を繰り出してしまう。

　その違反行為で西尾に1ポイントを献上することとなり、旗判定まで持ち込むことができず“小よく大を制する”ドラマは完結ならず。西尾にとっても、判官びいきな視線に対し、説得力ある攻めを見せられたわけではなかったため、不本意な部分があっただろう。安全性と実戦性、そしてシンプリシティー。“三”律背反なきバランスのルール設定の難しさを感じさせた大会であった。

入賞者。左から目黒、服部、遠藤、西尾、佐々木、辻野、中上、小野、渡辺

＜大会結果＞

▼一般男子
優勝　　西尾勇輝（大阪府、大道塾大阪南支部）
準優勝　佐々木龍希（東京都、大道塾総本部）
第3位　遠藤春翔（東京都、大道塾総本部）
第4位　辻野浩平（大阪府、大道塾岸和田支部）
第5位　服部晶洸（神奈川県、大道塾横浜北支部）
第6位　中上悠大朗（東京都、大道塾総本部）
第7位　目黒雄太（新潟県、大道塾長岡支部）
第8位　小野寺稜太（東京都、大道塾総本部）

▼一般女子
優勝渡辺玲那（神奈川県、大道塾横浜北支部）

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