【月間ベストファイター・8月】五輪女子レスリング”金”須﨑優衣、怪我を乗り越えた完全試合、22年の抱負も
■ケガだけではない、実は19年に一度、ライバルに敗退し五輪出場がほぼ消滅していた。オリンピックへの大きな壁、その時、須﨑は――
レスリング経験者の父に影響され、須﨑がレスリングを始めたのは小学1年生の時。2013年、中学2年からは親元を離れ、トップアスリートを養成する日本オリンピック委員会(JOC)エリートアカデミーの門を叩く。同年、オリンピックの東京開催が決定。幼い頃からの「オリンピック出場」の夢は、明確な目標となった。
2017年、高校3年生の時には、世界選手権初出場。伊調馨以来となる高校生世界王者となり、翌年には連覇も果たした。
順調にキャリアを積んできた須﨑に試練が訪れたのは2018年。練習中に左膝の靭帯断裂に見舞われ、翌2019年には世界選手権の代表を決めるプレーオフで、ライバル入江ゆきに敗れた。
入江が世界選手権でメダルを獲得すれば、そのまま五輪代表となる。須﨑の五輪出場は、ほぼ消滅したといっていい。この時の心境を、須﨑は改めて振り返る。
「 その時は、ずっと東京オリンピックで金メダルを獲得するという目標に向かって頑張ってきていたので、『全てが終わってしまった』という絶望的な気持ちでした。また、周りにいる沢山の応援してくださる方々にも、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした」
絶望の淵に立つ須﨑が、再び前を見据え歩み出すことができたのは、やはり旧知の人々の温かさだった。 「負けたのにも関わらず、たくさんの人が励ましてくれて支えてくれました。『まだ優衣ちゃんがオリンピックに行けると信じてる』と沢山の方に言って頂いて、『周りの人が私のことを信じてくれているのに私が自分の事を信じてあげられなかったら、何も始まらない。支えてくれた方々にオリンピックで金メダルを獲得する姿で恩返ししたい』と思い、立ち直ることができました。本当に人に恵まれています」
自力での五輪出場の道は絶たれたかに思われたが、世界選手権に出場した入江がメダルを逃し、代表争いは振り出しに戻った。同年12月の天皇杯全日本選手権大会では、前回リオ五輪48kg級金メダリストの登坂絵莉、そして入江ゆきを破り優勝。アジア予選を4試合テクニカルフォール勝ちという圧倒的な強さで制し、自らの手で五輪出場の切符をつかんだ。
新型コロナの影響により五輪開催は1年延びたが、「逆にその時間で足りない筋力トレーニングなど重点的にできました。1年間さらに強くなれる期間を頂けたと思ってポジティブに考えていました 」と集中力やモチベーションを途切れさせることなく、2021年夏の本番に備えた。
レスリングの技に活かすべく、スピードスケートの選手も活用するスライドボードや、フリークライミングなども採り入れてきた。 「スライドボードは低い構えを継続する筋持久力、クライミングは指先の力がついて組み手で相手を崩す時に今まで以上に崩せるようになりました 」
「人事を尽くして天命を待つ 」という座右の銘どおり、1cm、1mmでも昨日より成長した自分になるべく、他競技のトレーニングにも積極的にトライする。その積み重ねが、「衝撃的 」とも評される東京五輪での快進撃につながった。
■朝倉海のYouTubeチャンネルで共演
最近はテレビ番組などにも引っ張りだこの須﨑。大晦日RIZINのバンタム級GPで準優勝した朝倉海のYouTube「海チャンネル」にも“ 参戦”し、話題となった。ちなみに出演の感想は――。
「あんなに強くて人気な方なのに、とても話しやすくて、とても優しい方でした。以前から朝倉海さんのYouTubeは見ていたので、出させて頂けてとっても嬉しかったです」
しばしの休息を経て、迎えた2022年。
須﨑の目線はすでに2年後の“パリ ”へと迷いなく向けられている。
■新年の抱負
「 2022年は私にとって新たな始まりの一年です。パリオリンピック出場、パリオリンピックで金メダルを獲得して二連覇する!という目標に向かって、目の前の目標を一つひとつ達成していきたいです!
まずは(6月の)明治杯で優勝して、プレーオフでもしっかり勝ち世界選手権に出場して、世界チャンピオンになることです。そして12月の天皇杯全日本選手権大会からパリオリンピックの国内予選が始まるので、絶対に優勝してパリオリンピックに繋げる1年にしたいと思います」
■須﨑優衣が受賞の喜びを語る
今回、月間ベストファイター賞を受賞した感想を須﨑は以下のように語ってくれた。 「数ある格闘技の中からベストファイター賞に選んで頂けて大変光栄です。モチベーションにも繋がります!また受賞させて頂けるよう、もっともっと頑張ります!」
また、サプリメントに関しては「ふだんはアミノ酸とプロテインを取り入れています。レスリングの練習はとてもハードなので、疲労を溜めないために、練習後にアミノ酸を取り入れています 」とのこと。特に疲労の蓄積を実感した時は、練習後にこだわらず毎食後に取るようにしているそうだ。
(取材=藤村幸代/編集=イーファイト)
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