2013年4月度MVP 森善十朗
毎月eFightが取材した大会の中で、最優秀選手を決める月間MVP。2013年4月のMVPは、4月28日(日)東京体育館で行われた『第5回全世界ウェイト制空手道選手権大会』で中量級2連覇を達成した森善十朗に決定!(2013年5月2日UP)
PROFILE 森善十朗(もり・ぜんじゅうろう) 1985年7月4日、石川県七尾市出身 身長173cm、体重79kg 1995年5月、極真会館石川県支部に入門 高校卒業後は上京し、東京城西支部に移籍 2006年第23回全日本ウェイト制中量級優勝 2009年第4回全世界ウェイト制中量級優勝 2010年第42回全日本大会準優勝 2012年第29回全日本ウェイト制中量級優勝 2013年第5回全世界ウェイト制中量級優勝 極真会館東京城西支部所属 |
選考理由
1、「全世界ウェイト制で中量級2連覇」
2、「準々決勝で逆転勝利を収め観客に感動を与えた」
3、「2年後の無差別級世界大会での優勝が期待される」
選考委員
Fight&Life、ゴング格闘技の各格闘技雑誌の編集長とeFightの全スタッフ
受賞された森選手には、ゴールドジムより以下の賞品(プロカルシウム 300粒 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、eFightより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジムMVP記念インタビュー
「“覚悟”があったから逆転勝ちが出来た」
■絶体絶命のピンチ!残り時間わずかで技ありを奪い返す
4年に一度開催される体重別の世界大会『全世界ウェイト制空手道選手権大会』。無差別級の世界大会と全日本大会では、3大会連続で外国人選手が優勝し、日本は王座を逃している。空手母国・日本の復権のためには、今大会でひとつでも多くの優勝を勝ち取ることが必要とされた。
森は4年前の第4回大会にて中量級で優勝を果たしており、今大会には2連覇が懸かっていた。1回戦はジャック・シア(カナダ)から後ろ蹴りで技あり(3秒以内のダウン)を奪い、好調なスタートを切った。しかし、続く準々決勝で早くも試練が訪れたのである。
序盤は優勢に試合を進めていた森だったが、アンドレイ・ズボレフ(ロシア)の上段ヒザ蹴りでまさかの技ありを奪われてしまったのだ。
「最初は何が起こったのか分かりませんでした。気付かないうちに四つんばいになっていて、最初は顔を殴られたと思ったんです。でも、審判を見たら技ありになっていて、セコンドが“立て、立て!”と叫んでいたのでようやく状況が把握できました。どっちかと言えば自分が優勢に試合を進めているという、ある種の油断があってやられてしまったのだと思います。全日本・世界大会規模の大会で技ありを取られたのは初めてでした」
立ち上がった森は試合再開と同時に、猛烈なラッシュを仕掛けた。最低でも技ありを奪い返さなければ、判定負けは確実。スタミナ配分など気にしていられない状況で次から次へと技を繰り出し、ズボレフを攻めた。
「焦りはもちろんありましたが、“やるしかない”“行くしかない”という気持ちだけでした。何とかしないと、という気持ちだけで戦っていました」
しかし、時間は無常にも過ぎていく。森の攻撃は的確にズボレフをとらえていたが、倒すには至らない。残り時間はもうわずか。
このまま森の判定負けか……と思われた次の瞬間、日本海式竜巻蹴りと命名された森の飛び廻し蹴りがクリーンヒットし、ズボレフがダウンしたのだ。「技あり!」主審が森の技ありを宣言すると、場内は割れんばかりの大歓声に包まれた。その直後に本戦は終了。ギリギリの追い上げだった。
「これは“運”が良かったです。自分の感覚としては狙って出したのではなく、一か八かで出した技がたまたま入ったという感じ。最後の最後で出した技だったので本当に賭けでした」
技ありを奪い返したことで本戦は引き分け。延長戦も引き分けとなったが、再延長戦は判定4-1で勝利。薄氷を踏む思いで準決勝進出を果たした。準決勝では優勝候補の一人であるイゴール・ティトゥコフ(ロシア)との対戦となったが、延長戦に入ることなく本戦判定4-0で決勝進出を決めた。
「ティトゥコフ選手は打撃力もテクニックも自分を上回るものを持っているイメージがあって延長戦も頭に入れていたのですが、思っていたよりもあっさりと決着がつきました」
■さらなる決意と覚悟を持ちたい
決勝戦は澤村勇太との日本人対決になり、本戦は互角の攻防が繰り広げられたが、延長戦になると森が左中段廻し蹴りとヒザ蹴りでラッシュを仕掛け、延長1回、判定4-0の勝利で2連覇を達成した。いま振り返ると、森は「精神的に吹っ切れたことが大きかった」という。
「準々決勝まで戦い抜いて吹っ切れました。ここまでやったんだから優勝するしかない、と気持ちが固まったんです。ある方に“一度死んだ身なんだから、やるだけやって来い”と言われて、もう考えてもしょうがないと思いましたし、逆にリラックスしてガンガンやれました。
今回は精神的な部分が違っていたと思います。無差別の世界大会で勝てなかったのは、覚悟が出来ていなかったのが原因でした。でも今回は何としてでもやるという気持ちがあったので、技ありを取られても何とか取り返すことが出来たのだと。そういった覚悟があったから技ありを取り返したり、優勝出来たのかなと、今は思います」
また、吹っ切れる要因となった準々決勝では不思議なことも起こっていた。準々決勝以降、森が多用していた左中段廻し蹴りはこの試合から出始めたものだ。
「左中段廻し蹴りは10代の時はよく出していた技ですが、20代になってからはあまり出していなかったんです。それを準々決勝で軽く出した時に、感覚的になぜか凄く身体に合ったんです。不思議な感覚でした。実を言うと、普段からスパーリングでも左の蹴りはあまり蹴らないんです。どちらかと言えば右の方が得意なので。ですから試合の時にあれだけ蹴っていたのは、感覚的に出していたのかな、と思います」
森が2連覇を達成し、軽量級では小沼隆一、重量級では荒田昇毅が初優勝。軽重量級を除く3階級を日本が制し、全日本および世界大会の王座奪還へ向けて弾みの付く大会となった。しかし、森は“やった!”という気持ちにはなれないという。
「嬉しさよりも安堵感の方が強いです。2連覇できたことの安堵よりも、無差別の世界大会で不甲斐ない負け方をしてしまった自分が、もう一度世界の舞台に立って、ある程度のところまで戦えたことに対する安堵です。
個人的にはまだまだ足りないことが多すぎると分かったので、大会の2日後からトレーニングを再開しました。休んでいる暇はない、という感覚があります。2連覇できて嬉しい気持ちよりも、さらなる決意と覚悟を持たないといけない、という思いです」
2連覇達成に満足せず、秋の全日本大会、そして2年後の無差別の世界大会へ向けて森はすでに動き出している。
関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「全世界ウェイト制大会で日本が三階級を制覇!」
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