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【コラム】UFCがセンサー内蔵グローブを試験的に導入
AIとビッグデータで総合格闘技をより面白く

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■センサーでパンチのパワー、スピード、衝撃などのデータを収集・分析

測定センサーが内蔵されたオープンフィンガーグローブが試験導入されたという「UFC 219」のメインはクリスチャン・サイボーグvsホリー・ホルムが行われた

 世界最大規模を誇るアメリカの総合格闘技団体『UFC』が、人工知能(AI)とビッグデータ(様々な種類・形式のデータ)の活用を進めている。

 現地メディア(MMA Junkie)の報道によると、UFCは昨年12月のナンバーシリーズ大会『UFC 219』から、測定センサーが内蔵されたオープンフィンガーグローブを試験導入。パンチのパワー、スピード、衝撃などのデータを収集・分析し、競技のさらなる理解につながる情報としてファンにリアルタイムで提供することを目指しているという。

 UFCではこれまでにも担当者が試合映像を見ながら、スタンド(立ち技)やグラウンド(寝技)などポジションごとの打撃数や、頭部やボディなど部位ごとにヒットした打撃数などを記録していた。試合中継では画面下に「Significant Strike Landed」(フィニッシュに結びつくような有効打)などの数値データが表示され、公式サイトの選手プロフィールには打撃以外のさまざまな統計も掲載されている。ただ、パンチのタイプやヒットの有無などは、記録者の主観に依るところもあったようだ。

UFC公式サイト(USA版)にはさまざまなデータの統計も掲載されている

 今回、UFCがセンサーの試験的運用にあたり、競技を管轄するネバダ州アスレチック・コミッション(NSAC)から承認を受けたのは昨年12月12日のこと。UFCはセンサーの商業的な利用だけではなく、脳しんとうに関するガイドラインやトレーニング理論の改善など、選手の安全面の向上に貢献する可能性も打ち出したとされる。

『UFC 219』とそれ以降の大会でもセンサーの試験導入は継続されているようだが、現在までに具体的な運用状況や成果などについては明らかにされていない。しかし、このセンサーとそれを活用したサービスの概要については、昨年11月27日から12月1日にかけてラスベガスで開催されたAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の年次カンファレンス『AWS re:Invent 2017』において、開発・提供元の企業からプレゼンテーションされていた。

■センサー付きグローブでデモンストレーションが行われていた

 登壇者はAGT International社の創設者兼CEO(最高経営責任者)で、HEED社の共同創設者でもあるマチ・コチャヴィ氏(イスラエル)。今回のUFCの試みにおいて、AGT Internationalがセンサーによる測定、データの収集と蓄積、AIによる処理まで、HEEDがパッケージ化とサービス提供までを担うようだ。

 プレゼンテーションの中では、実際に会場のステージ上で現UFCファイターのエドソン・バルボーザ(ブラジル)とマルク・ディアケイジー(コンゴ)が、試合を仮想したスパーリングを実施。そこには試合さながらの実況も加わり、スパーリングと同時進行で、センサーが計測した様々なデータがグラフや数値によりビッグスクリーンで可視化された。

「今ご覧いただいた2分間の試合から、我々は70の新たな発見を導き出すことができる。それらはバルボーザとディアケイジーのパッション、パワー、回復力、戦略など、オクタゴンで起こるすべてをカバーする。スポーツのストーリーをこのようなかたちで語っても良いのではないだろうか? リアルタイムに、リアルな情報、リアルなデータ、リアルな考察、リアルな感情を。それらは今、皆さんがビッグスクリーンで目にしたものだ。我々はこれをスマートフォン上でもクールなかたちで表現することになるだろう」(コチャヴィ氏)

 センサーとAIによる単なる統計分析にとどまらず、それを「スポーツの新しい語り方」として模索・提供するというのが、同氏が目指している方向だ。

次ページ:デモンストレーションの結果と格闘技観戦の未来形
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