第42回 「藤原あらしをKOした江幡睦の素晴らしい技術、攻撃のプロセス」の巻
打撃のスペシャリストである筆者が、最新の試合を題材に打撃技術を分析していく連載コラム。今回は7月22日に行われた新日本キックボクシング協会『MAGNUM 29』の江幡睦vs藤原あらしを分析。序盤からKOへ結びつくまでの江幡の攻撃プロセスを徹底分析!
■江幡とあらしのミドルは明らかに違っていた
江幡睦vs藤原あらしの再戦。以前の両者の戦いはあらしの完勝だったが、目下5連続KO勝ちと勢いに乗る江幡相手に前回の試合は参考にはならない。
ラウンド序盤から力であらしをねじ伏せようとする江幡。恵まれた上背、リーチを活かして、江幡はじりじりと圧力を掛けながら、右ミドルを中心に攻め込む。基本的なサウスポー対策の攻撃パターンである。
あらしも負けじと左ミドルを放つのだが……この日の二人のミドルは明らかに違っていた。何が違っていたのか? リーチ? スピード? それとも身体的なもの? 体格など素材の違いもあることはあるのだが、技術的な要素で大きく異なる点があった。それは何か?
ズバリ『蹴る際の踏み込みを伴っているか、いないか』ということだ。
江幡は右ミドルを蹴る際に、必ず前足の左足を5~10センチ踏み込んでくる。一方のあらしはほとんど前足の右足の踏み込みがなく、その場で左ミドルを放つ。踏み込めないのは江幡の圧力のせいか、それとも他に怪我などの要因があったのかは定かではない。
当然のことながら踏み込みを用いているのといないのとでは、蹴りの伸びや切れが必然的に変わってくる。ラウンド序盤から、ミドルのヒット数、 手数でも江幡があらしを上回る。左ミドルでペースを奪い、理詰めに試合を制していくあらしが、逆にミドルで主導権を握られるとは……。
恵まれたリーチを活かし、しっかり踏み込んでから繰り出されるミドルは見た目以上の威力を生み出す。腕で受けると“ズシーン”という重さを感じさせられ、こちらの気持ちまでもが徐々に削られていく感じがするものである(経験談より)。
何度か左腕のシングルブロックでミドルをディフェンスしていたあらしだったが、時折、上体ごと江幡の右ミドルで崩されてしまう。
どんな者でも、上体など体を左右に揺さぶられ始めるとそれを元に戻そうとする復元作用が本能的に体内に生じ、その際、若干だが脇や手が開き気 味になってバランスを保持しようとする。高い平行棒を渡る際に、バランスを崩すと本能的に手を広げてバランスを取ろうとする動作と同じであり、人間は両手 を広げて自身の体内に体軸をつくりバランスを復元しようとするのである。
この日のあらしは、 ・・・
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吉鷹弘の「打撃」研究室 第42回 内容 |
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