2015年1月度MVP 中村好史
毎月イーファイトが取材した大会の中で、最優秀選手を決める月間MVP。2015年1月のMVPは、1月25日(日)東京・後楽園ホールで開催された「PROFESSIONAL SHOOTO 1st Round 2015」で宇野薫を破り、第6代修斗環太平洋ライト級王者になった中村好史に決定!(2015年2月6日UP)
PROFILE
中村好史(なかむら・よしふみ) |
選考理由
1、「宇野薫を破って世代交代」
2、「修斗環太平洋王座を獲得」
3、「まだ26歳と若くさらなる飛躍が期待される」
選考委員
Fight&Life、ゴング格闘技の各格闘技雑誌の編集長とイーファイトの全スタッフ
受賞された中村選手には、ゴールドジムより以下の賞品(プロカルシウム 300粒 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、イーファイトより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジムMVP記念インタビュー
「今回も練習中はかなり泣きました」
■テレビで観て憧れていた宇野薫との対決
“総合格闘技のパイオニア”として知られる宇野薫が、約14年ぶりに修斗のタイトルマッチに臨むことで話題となった今回の一戦。第6代修斗環太平洋ライト級王座を争うその相手は中村好史。宇野は中村の師匠である桜井“マッハ”速人のデビュー戦の相手でもある。
戦前の予想では、主に外国人選手を相手に6連勝を飾っている宇野が有利と見られていたが、中村は1Rに宇野をタックルから豪快にリフトアップして4度もテイクダウンに成功し、先制する。
しかし2R、宇野は打撃で優位に立ち、終盤には得意のバックを奪って逆襲に転じた。
「宇野選手は相手が後半に攻め疲れした時にバックを取りに来るので、バックを取られないことは凄く意識していましたが取られてしまいましたね。“あっ!”と思いました」
宇野の攻勢は3Rも続く。パンチからのタックルでテイクダウンを奪うと、またも中村のバックを奪った。
「宇野選手はいくら攻めても失速しない感じがして、3Rにテイクダウンされてバックを取られたのもきつかったです。自分の中で1Rは取ったと思ったんですが、2Rは取られたと思い、3Rは勝負に行きました。テイクダウンされたところで上のポジションをキープされたら負けると思ったので、どうにかして立たないといけない、バックを取られてでも立とう……という考えでした」
中村の判断は正しかった。立ち上がることに成功してテイクダウンを奪い返すと、立ち上がった宇野にパンチの連打を浴びせ、宇野は腰を落とす。立ち上がった宇野もパンチで反撃したが時間切れとなり、中村が判定3-0で新王座に就いた。
接戦の末にビッグネームを破って世代交代を果たし、王座に就いた中村は次のように振り返る。
「予想通りしんどい試合になりましたが、終わってみれば楽しかった、充実した試合でした。いつもお世話になっている道場の人たちには勝つことでしか感謝の気持ちを現せないので、自分がチャンピオンベルトを巻いた姿を見せることが出来て本当に嬉しかったです」
中村は元々、格闘技ファンだった。幼少の頃から柔道を学び、高校生の時にテレビで見たPRIDEに影響を受け、高校卒業と同時に単身上京してマッハ道場に入門した。
「自分が格闘技を知ったのはPRIDEやHERO’Sです。PRIDEはマッハさんが有名で、HERO’Sは宇野選手だったじゃないですか。肩書きが“総合格闘技のパイオニア”で、試合を見ていて面白い選手だなって思っていました。
昨年10月の『VTJ 6th』も観に行ったんですが、宇野選手が逆転勝ちしたのを見て、興奮して思わず立ち上がって絶叫していました(笑)」
テレビで観て憧れていた選手と自分が戦うことになるとは、想像もしていなかったという。
「宇野選手はDREAMでもトップ戦線でやっていましたし、UFCにも出ていましたし、修斗に出てくるとは思っていなかったんです。しかも格下である自分との試合を受けてくれるとも思っていなかったので、そういう意味で凄い人だなって思いました」
憧れや尊敬の念があっても、試合となれば別だ。中村には格闘技界全体のことを考えて、自分が勝たなければいけないとの使命感があった。
「自分が総合格闘技を始める前からトップだった人が今もトップで引っ張ってくれているのは凄いことだと思いますが、逆に底上げがないってことじゃないですか。野球やサッカーでも世代交代があるから盛り上がっているのだろうし、前世代の壁を超えないといけない、若い選手が勝たないといけないとの想いがありました」
■茨城から自転車で巣鴨へ、夜10時のソリ引きトレーニング
宇野戦でも武器となった、相手を持ち上げてマットに叩きつける豪快なテイクダウンは中村の得意技。ところが、意外にも中村はそんなにパワーがある方ではないという。
「ウェイトトレーニングの重量はそんなに上がりません。他の選手は150~200kgくらい上げているんですが、自分はベンチプレスでも100kg上がるか上がらないかです。
今回の試合前はマッハさんに練習を見てもらっていて、サンドバッグで追い込んでもらった後、夜10時くらいにソリにおもり(バーベルのプレート)を乗せて引いたり押したりするトレーニングをやりました。最初は凄い重量だったんですが、アスファルトの上だったから滑りが悪くて全然進まず段々とおもりを減らしていって、最後は20kgくらいになっていました(笑)」
道場のスパーリングでは、リフトアップするどころかテイクダウンすることもほとんど出来ないというから意外だ。しかし、試合で出来たのは過去の練習で培ったものがあったからではないか、と中村は言う。
「以前に打ち込みで持ち上げる練習をやっていた時期があったのと、高校時代にレスリングも少し教わったんです。その時の先生が松本慎吾さん(男子アマチュアレスリンググレコローマン84kg級で北京オリンピック代表。相手を持ち上げて投げ飛ばす俵返しが得意)を高校生の時くらいまで教えていた先生でした」
パワーファイターのイメージがある中村だが、本人はパワーよりも“気持ち”で勝っているとの意識が強い。
「以前は茨城から巣鴨の道場まで朝練に自転車で行っていました。今回のソリもそうですが、そういうトレーニングは筋力的な部分だけではなく気持ちの部分で、これを乗り越えられたから勝てるっていう自信がつきます。
最後は自信をつけて試合に持っていくんですが、ギリギリまではけっこうヤバイです。今回も練習中はかなり泣きました。自分はすぐに泣いちゃうんです。練習がきつくてではなく、“こんなんじゃ勝てない”って思うと勝手に涙が出てしまうことが多かったです」
環太平洋王座を獲得したからには、次は世界王座奪取に期待がかかるところだが、中村は「まずは環太平洋王座を防衛してから。しっかり初防衛してから世界王座を獲りたいですね」と謙虚だ。
「その先にはUFCという目標もありますが、まずは目の前のことをクリアしていきたいと思っています。今、修斗が盛り上がってきているので、自分たちのような新しい選手で盛り上がる試合をしていきたいと思います」
次回は5月の修斗に出場したい、と中村。早くも周囲からは“マッハ二世”の呼び声も高いが、焦らず一歩一歩前へ進んで行きたいという。まだ26歳。さらに強くなる可能性を秘めた王者は、今日も涙を流しながら練習に励んでいる。
関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「宇野薫を破り中村好史が新王者に」
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