2012年12月度MVP 内山高志
毎月eFightが取材した大会の中で、最優秀選手を決める月間MVP。2012年12月のMVPは、昨年大みそかにプロボクシングWBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチで6度目の防衛に成功した内山高志に決定!(2013年1月16日UP)
PROFILE |
選考理由
1.「2年連続の大晦日ビッグマッチで暫定王者をKOで下して王座統一」
2.「世界的にも群雄割拠のスーパーフェザー級世界戦で6度目のKO勝ち」
3.「ボクシング界のみならず2013年の格闘技界を背負って立つ存在」
選考委員
Fight&Life、ゴング格闘技、BOXING BEATの各格闘技雑誌の編集長とeFightの全スタッフ
受賞された内山選手には、ゴールドジムより以下の賞品(プロカルシウム 300粒 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、eFightより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジムMVP記念インタビュー
「強くなりたい--それが僕の原点であり、試合に向けてのモチベーション」
■「とにかく白黒付ける試合をやり切りたかった」
大晦日のテレビ中継という全国的に注目の集まる世界タイトルマッチで、試合前には大橋秀行・全日本プロボクシング協会会長からニッポンのエースに指名された内山高志は、コスタリカからやってきた刺客、暫定王者のブライアン・バスケスとの王座統一戦を豪快な8RTKO勝ちで飾り、6度目の防衛に成功。2012年を締めくくり、エースの重責を果たした。
この試合を迎える内山にはこれまでにない決意があった。5ヵ月前の前戦、初の凱旋試合となった埼玉・春日部での防衛戦(対マイケル・ファレナス)が、あろうことか3R負傷ドロー。防衛回数こそカウントされたが、それまで4度の防衛戦をすべてKOで片付けてきたKOキングにとって不本意極まりない結末は、バッティングでザックリ切ったマブタの負傷以上に内山の心に影を落としていた。
「いつも試合に対して不安を抱くことはないのですが、今回は変なプレッシャーがありました。前回ドローでしたから、また切った、つまんねぇなと思われたくなかった。KOでも判定でもいいからとにかく白黒付ける試合をしっかりやり切りたいと。それが発奮材料になって、今回は体調も万全、トレーニングも充実していました。でも試合ですから、見せようと思って見せられるものではないので、練習でやってきたことを出せて、とにかく勝つ試合ができたらいいと……」
初体験の微妙なプレッシャーを背負いながら迎えた相手が無敗のトップコンテンダー。女子世界王者を妻に持つバスケス(25歳)は29勝15KO。内山(18勝15KO1分)を上回る戦歴の猛者はハードルの高いものに思えたが、内山は難なくそれをクリアしてみせる。初回、相手の様子をうかがうスタートもいつも以上に集中力が高い。ハイテンポな攻防は様子見の範疇を超え、満員の大田区総合体育館に王座統一戦の凄みで満たした。そして試合は2Rと早い段階から動き出した。
動かしたのは王者・内山--積極的にバスケスを攻め立てプレッシャーを掛ける。「確かにいつもより早かったですね。先に仕掛けようという判断は自然な感覚でした。左ボディーのカウンターが有効でした。相手のガードが下がったし、ブロックの形を変え、フットワークを使ってきたから、ここは狙い目だと」
バスケスはスイッチをも駆使し、コンパクトな連打を放って正王座攻略を目論むが、内山が動ずることはなかった。サウスポーになったらハードな右ストレートを送り込み、バスケスが得意とする左ボディーには同じパンチをカウンターでお返しして封じ込め、ジワジワと袋小路へ追い詰めていったのだ。
「相手も左ボディーが得意。でも左ボディーを打つということは身体の位置が僕の左ボディーブローの正面に来てストマックが空く。だから先に相手に左ボディーを打たせて、カウンターを狙っていました」
KOダイナマイトの異名を持つ内山は間違いなくハードヒッターである。しかしその強さの本質はクレバーさにある。5R、試合をワンサイドゲームに持ち込んだ後、内山は一旦ペースを落としたようにも見受けられたが、「相手が盛り返そうと出てきたので、こっちが必要以上に動かなくてもよかっただけ。ただプレッシャーだけは掛けていました。相手の呼吸などをしっかり読み、それに合わせてこちらのペースを上げ下げ。ポイントを取られたとしてもペース自体は譲らずに常に圧力をかけてラウンドを進めようとしました。圧力のかけ方? 僕はジャブを数多く打つのではなく、相手にしたら“打つと打ち返される”という圧力ですね。ガードの上からでもいいんです。“打ったら強烈なお返しが来る”と思わせることが大事。そう思わせれば相手は手が止まるし思い切りが失われる。心理戦ですね」
■気になる2013年のビッグマッチは…
試合を思うがままにコントロールした内山が仕上げに掛かったのは8Rだった。一気に弾けた内山はバスケスをロープに釘付けにすると猛ラッシュを敢行。ラウンド終了と同時の3分ジャストでレフェリーが試合を止めたのだが、派手なフィニッシュシーンとは裏腹、内山はここでもクールだった。
「ジャブを外して左のアッパー気味のフックをヒットしたら相手がガクっとなった。ダメージを確認して、仕留められると思ったのでラッシュを掛けました。でも思い切り振り抜いてはいません。力を入れて打つのではなく、上体を安定させたままコツコツ打ち抜こうと。でも相当打ちましたね(笑)。これまでにないくらい打ちました。それだけのラッシュができるトレーニングをしてきた自負はあります」
敗者となったバスケスは「レフェリーはいい仕事をした」とストップの正当性を認め、内山のパワーとともにベーシックな体力、フィジカルの強さを世界トップレベルだと評価した。
「回復力、マックスの持続力を高める心肺機能のトレーニングのほかに、最近はフィジカル面のトレーニングにも新たに取り組んできました。それらが機能したからああいうラッシュにつながったのかなと思います。トレーニングの効果ってそれがどういう形で生きるとはっきり示されるものではない。でも相手の口からそういう評価が出ると自信になりますね」
負傷ドローのファレナス戦を除いて完璧な防衛ロードを歩む内山だが、常に新しいトライがある。
「とにかく“強くなりたい”。だからいろんなトレーニングやるんです。強くなりたい--それが僕の原点であり、試合に向けてのモチベーション。厳しい練習って楽しみでもあるんですよ、“また新たなキツさが来たな”って(苦笑)」
一貫してブレない内山のボクサー・スピリット。充実した日々はキングに精神的、肉体的な成長を実感させる。そしてついにビッグマッチのプランが具体化しつつある--ユルオルキスス・ガンボア(キューバ)との対戦だ。
ガンボアはスーパーフェザー級で新たに暫定王者の座に就いた指名挑戦者。アマ強国キューバの出身でアテネ五輪金メダルの実力者だ。プロ入り後も元フェザー級のWBA-IBF統一王者で22勝16KOとパーフェクトレコードを誇るスーパーチャンピオンの一人だ。内山はそんな相手と、次戦というわけにはいかないだろうが、近い将来戦う可能性が高い。
「ガンボア、もう本当に世界のトップですよ。明らかに僕より強い。だからこそやりたい。どれだけ強いんだろう、自分の攻撃がどれだけ通用するんだろうって想像するとたまらないですね。ビデオを見てイメージもしています。今の段階でイケる可能性は3割ぐらいですか」と笑いながら語った内山だが、「(勝てる)可能性は絶対にありますから、また練習します」と締めくくった。どんな逆境でも諦めず、勝つことだけを信じる、そんな片鱗を内山に見た。
関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「内山が8RTKOで6度目の防衛に成功」
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