■AbemaTVも格闘技界もスーパーライト層をどう獲得するか
ーー面白いと思ったのは、ONEの解説に若い選手を使っているじゃないですか。今までの格闘技番組ではあまりなかったことです。
田邊 瀧澤謙太選手ですね。
北野 今時の若い人たちが観ているのがABEMAなので、耳に入ってきたABEMAの実況&解説が「自分に関係のない出来事」だと思って欲しくないんですよ。極端な例えですが、友だちと格闘技を観に行って隣でちょっと詳しいやつが教えてくれるようなイメージです。とはいえ、何が起きているのか分からないから実況の方はちゃんとした人がいいんじゃないか、とか。
ONEは凄い団体で毎回1万人を超える動員がある興行をやっていて、しかもアジアの各大都市で開催していますが、日本ではあまり知られていません。それを伝えるのには思い切った方法ではないとダメだな、と。自分の方が上手いという解説の方もいらっしゃると思います。でも実況・解説陣の顔出しがないスタイルでやっているので、声が若くないとダメだなって思っているんです。声が自分よりも年上だと感じたら、若者たちは観てくれないんじゃないかと思って。自分の中間管理職としての苦労から考えました(笑)。
チャンネルをパッと変えられるので一瞬で判断されてしまうじゃないですか。「俺に関係ない」と思われたくない一心なんです。Bellatorの解説をしていただいている大沢ケンジさんも、ある方から彼は驚きを表現するのが上手い、「驚き上手」だって推薦を受けたんですよ。ああ、なるほどと思って。やっていることが凄いというのも、隣で見ている詳しいやつが“スゲェ”と言ってくれないと分からなそうじゃないですか。
寝技になった時に攻めているか攻めていないか分からなくても、周りが盛り上がっていたらスゲェと思える感じを演出するには声も大事だなと思います。だから今までの格闘技中継ではなかったような、そういう人たちから怒られてしまうような組み合わせがいいんじゃないかと、思い切ってやってみました。
声の若いゲストを連れてくるとか、全然関係のない十代の女性のタレントさんを連れて来るとか。でも中身もきちんと正確に伝えないといけないのでそこのバランスを考えます。声に張りがあって元気なお兄ちゃんみたいな人が喋ってくれるのがいいと思っています。
田邊 スーパーライト層をいかに取っていけるかだと思うんですよね。北野さんはド・コア層だと思うんです。ご自身でも格闘技をやられているし、格闘技雑誌を定期購読してUFC FIGHT PASSにも入っている。一方、僕もわりと格闘技は好きだった方ですが、選手を詳しく知っているわけではない。そういう僕のような人たちっていっぱいいると思うんですよね。ABEMAとしても格闘技界としても、そういうライト層のマスユーザーをいかに取れるかが大事だと思います。
北野 アニメチャンネルを見に来たけれど、いくつかチャンネルをザッピングしたら格闘技をやっていたからたまたま見た、という人たちがいると思うんですよね。そういう出会いを作ることもABEMAの役割だと思っています。いま目の前で初めて格闘技に出会った人たちに、どのように見せたらいいんだろう、というのはいつも悩んでいます。
ーーそんな中で7月、世界最大メジャーであるUFCを3日間にわたって放映されましたね。
北野 僕は36歳ですが、ABEMAのスタッフは僕よりも若い人たちが多いんです。サイバーエージェントさんでは能力の高い人が若くして高い役職に就きます。そういう人たちと話をしていて、僕はもっと格闘技を流したいから一生懸命プレゼンテーションするんですが、何人か格闘技好きになってくださった方がいるんですよ。その中からUFC FIGHT PASSに登録してくださる方が出てきて、さらに「UFCのメインカードとかやってみたいよね」と、無邪気に凄くハードルの高いことを言い始めたんです。
田邊 僕もですが、何も知らないからこそ無邪気に言えるんですよね。(笑)
北野 それでいろいろな人に聞いてまわり、ご紹介していただける方とお会いでき、長い交渉やいろいろな条件が重なって今回、奇跡的に実現出来たんです。長い交渉と言ってもそれは自分の中の感覚であって、実際は2カ月くらいだったと思います。
■無料生放送のビジネスモデルとは?
ーー放映は無料ですが、どうやって利益を得るのですか?
北野 CMです。ABEMAの基本的なビジネスモデルは広告なんです。
田邊 一部有料課金になっていますが、メインは広告収益で回収していきます。
ーー広告はサイバーエージェントがネット広告販売の会社なのでそこの強みで集めているのですか?
北野 いえ、ABEMAの中に広告部門があり、テレビ朝日、サイバーエージェントが協力してセールスをしています。
ーーテレビ朝日の協力するスタンスは番組プロデュースとテレビ朝日が提携する海外のテレビ局の衛星を使い海外放送をABEMAで見られることですか?
北野 番組制作と海外中継のノウハウ、あとは芸能事務所などとの各コネクションに関してはテレ朝が一日の長があるというところでしょうか。
田邊 テレビ朝日様との共同事業ということで、まだ立ち上げたばかりのサービスですがたくさんのコンテンツホルダー様に信頼、期待をしてコンテンツを提供いただけていると思っております。また、安定した生放送を実現するための技術に関しても多大なサポートをいただいています。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします
TwitterでeFight(イーファイト)格闘技情報をフォローしよう!
Follow @efight_twitインスタグラムでeFight(イーファイト)格闘技情報をフォローしよう!