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【コラム・動画】能力開発&トランポリンで強くなる格闘技ジム

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■「脳トレ+運動」で楽しみながら能力を伸ばす

 競技者としてパフォーマンスを向上させるうえで、肉体トレーニングに加えて能力開発にも力を入れる選手やチームが多くなっている。その能力開発のプログラムとして最近注目を集めているのが「ライフキネティック」と呼ばれるトレーニング理論だ。

記者がお手玉を使ったトレーニングを体験

 これはドイツで誕生したトレーニング理論で、2つ以上の異なる運動と認知・視覚能力を問う課題を組み合わせながら同時に行うことを基本としている。簡単に言うと”脳トレ”と”運動”を組み合わせたエクササイズだ。これにより脳に刺激を与えることで、脳が処理する能力と速度を向上させ、一瞬の判断力や決断力を養うことが出来るという。 

 近年、世界のサッカーシーンではドイツの代表チームやクラブチームが輝きを放っているが、その躍進を支えている1つの要因にこのライフキネティックが挙げられる。この理論に基づいたトレーニングを選手育成に取り入れたドイツのナショナルチームや名門クラブチームのボルシア・ドルトムントが、世界レベルの大会で優勝や上位進出を果たすなど、軒並み結果を残したからだ。特に両チームの選手がピッチ上で見せた状況に応じて攻守を切り替える判断力とスピードには世界から注目が集まった。
 
 格闘界でこうしたライフキネティックがもたらす効果にいち早く注目したのが元K-1ファイターとして活躍した安廣一哉氏だ。安廣氏はライフキネティック認定トレーナーの資格を取得。5月4日に杉並区高円寺にフィットネスジム「ハレロイスタジオ」をオープンし、この理論を取り入れたエクササイズや空手のレッスンを実践している。

 今回、このライフキネティックを実際に体験してみた。

 最初に体験したのはお手玉を使ったトレーニング。まず、2つのお手玉を両手に持ち、真上に投げてキャッチする。その際に手は交差させてキャッチする。右手で投げたお手玉は左手で、左手で投げたお手玉は右手でキャッチする要領だ。その状態からまた真上にお手玉を投げ、一瞬で腕の交差を解いてキャッチする。このサイクルを繰り返し行う。

 一見簡単そうに思えるが、実際にやってみると難しいということがよく分かる。腕を交差しなければならないということで頭が一杯になり、真上に投げれなくなったり、交差した後のキャッチの動作が遅れたりする。ほんの一瞬の間で、頭がパニックになっているのが分かる。

 ここで大切なことは、こうして失敗をすること。頭がパニックになるということは、それだけ脳に刺激が与えられているという状態であるからだ。私も何度も失敗を繰り返したが、次第に成功する回数が増えるにつれて落ち着いて素早く対処出来るようになってきた。

 しかし、ここでもう一つ重要なことがある。それは、ライフキネティックのトレーニングはルーティーン化してしまうと効果が無くなってしまうということだ。つまり、慣れてしまうと特に考えなくても出来るようになってしまい、脳への刺激も少なくなってしまう。

お手玉のトレーニングを実演する安廣氏

 ライフキネティックでは常に新しい動きや課題を試みることで、常に脳に刺激が与えられる状態に保つ必要がある。技術トレーニングのように一つの技や動きが自然と出せるようになるまで反復するのではなく、出来るようになってきたらまた新たにアレンジを加えて難易度を引き上げる。インストラクターの下で行うと、競技者の慣れ具合を客観的に判断しながら適切に課題や動作をプラスして難易度を引き上げてくれるはずだ。

 ちなみにお手玉のトレーニングでは、お手玉の持ち方を変えるだけで難易度が上がる。手のひらが下に来るようにお手玉を上から掴んだら、軽く上に放り投げて、一瞬で腕を交差させてキャッチ、これをまた繰り返す。お手玉の握り方を変えるだけで、一気に難しくなることが実感出来るはずだ。でもこれでまた新たな刺激が脳に加わるようになる。

 もう一つ、2人1組で行うトレーニングも体験した。このトレーニングのルールは、ボールを投げる際に計算式を出し、答えが偶数なら受け手側は右手でキャッチしながら左足を前に、奇数なら左手でキャッチしながら右足を前に出すというものだ。これもやってみると想像以上に難しい。ボールが自分のところに到達するまでに瞬時に頭で計算して答えを導き、さらにルール通りの動作をするとなると、またまた頭がパニックになるが、これこそまさしく脳に刺激が与えられている証拠だ。

 では、これは格闘技にはどのような効果があるのか?安廣氏は「リングの中では、相手の動きを見ながら、セコンドの声も聞かなければいけない、自分のやるべきこともやらなければいけないですよね。複数のことを同時に素早く判断しながらこなさなくてはなりません。こうした状況に対応するために、こうしたトレーニングを通じて複数の複雑な作業を同時にこなすことで、目や耳で捉えたさまざまな情報を脳が把握し、判断・処理するまでの速度を高めることが出来ます」と話す。

3人1組でミット稽古も体験。この内容は動画で紹介

 実際にライフキネティックを体験してみると、思わず自分のミスに吹き出してしまったり、グループのメンバーとお互いの間違いや思わぬ動作を笑い合ったり、とてもリラックスした雰囲気で取り組めた。「間違えたらどうしよう」というプレッシャーや「また間違えてしまった」という後悔はまったく感じなくて良い。むしろ失敗が脳への刺激となりトレーニングの成果を生み出す。「ナイス失敗!」と声を掛け合いながら、楽しくパフォーマンス向上に取り組めるトレーニングだ。

■トランポリンで格闘技が強くなる!?

トランポリンを使ったエクササイズ「ユーバウンド」

 安廣氏のジムではライフキネティックに加えて、もう1つ「ユーバウンド」と呼ばれるトランポリンを使ったエクササイズメニューを提供している。このメニューは、テンポの良い音楽に合わせながら、不安定なトランポリンの弾力面でエクササイズを行うことで、体幹をはじめ、格闘技においては蹴りに必要な太腿や大腰筋、腸腰筋が主に強化されるという。また、心肺機能や持久力の向上、体脂肪率や内蔵脂肪の低下も期待出来る。インストラクターの下で適切に実践することで、エクササイズの効果を高めることはもちろんだが、ヒザや腰などの関節への負担軽減にもつながる。

 このユーバウンドも実際に体験してみた。音楽に合わせた準備運動からスタートし、徐々にテンポアップしながら運動に入っていく。トランポリンは思ったよりも弾力があり、少し動いただけでも反動が太腿や腹筋、腰、お尻に効いてくるのが分かる。そのトランポリン上で半回転や片足立ちなどを加えた跳ねる動作をリズミカルに行うため、初めのうちは姿勢を崩さずバランスを取るのに一苦労。

 しかし、徐々にトランポリン上の感覚に慣れ始めると、音楽に合わせて次々と展開されていくエクササイズに夢中になってくるのだ。そして、トランポリンから下りると下半身とお腹周りに効いたのを実感。トレーニング効果ももちろんだが、楽しみながら取り組めるため、飽きずに続けられるところも魅力的だと感じた。

【ジム情報】
ハレロイスタジオ
東京都杉並区高円寺南5丁目21番7号 高円寺マンション103号
【営業時間】11時~22時
【問い合わせ】03-6768-8061
【ホームページ】http://hareroi.tokyo/
※今年5月4日にオープン。空手、キックボクシング、ライフキネティック、トランポリンエクササイズなどのクラスを用意

【プロフィール】
安廣一哉 Kazuya Yasuhiro
1976年8月22日、北海道出身

’99~’00 正道全日本軽量級 2連覇
’01 新空手全日本中量級 優勝
’05 K-1 WORLD MAX 世界第3位

2008~2016年3月まで聖徳学園中学・高等学校で保健体育教師を務め、現在はフィットネスジム「ハレロイスタジオ」の代表、そしてライフキネティック認定トレーナーとして活躍する。

【動画】安廣一哉が教えるライフキネティック脳トレで格闘技が強くなる方法
お手玉を使った初歩的なトレーニングやライフキネティック理論を応用したミット打ちを動画で紹介。

【動画】ユーバウンド(トランポリン)を使った足腰、体幹強化トレーニング
関節への負担が少なく体を痛めにくいトランポリンを使ったトレーニング。

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