被災地・岩手県盛岡市にある極真会館本部直轄 岩手道場で、リーダー的立場にある松村。今年6月のウェイト制大会でも活躍が期待された彼は、3.11以降、道場生の安否確認、道場周辺への救援物資の運 搬、被災地情報の情報収集から、ウェブを利用して積極的に被災情報を発信し続けた。4月に入ってようやく道場の稽古を再開、そして世界大会を狙う選手とし てのトレーニングも再開した。あの大震災から約3カ月、松村はどんな日々を過ごし、どんな思いで今回のウェイト制大会に臨むのか。(2011年6月7日 up)
PROFILE |
■東北地方太平洋沖地震が発生後、3日間は車に寝泊り
――3月11日、大地震発生の瞬間はどんな状況でしたか。
「盛岡道場で事務仕事をしていたところだったんですが、携帯の地震警報が鳴って、直後に大きな揺れが来ま した。まず建物から避難しようとしたんですが、揺れが大きくて壁をつたいながら歩くのが精一杯。なんとか外に出てみると、自分の車が弾むように揺れてい た。これはとんでもないことが起こっているなと思いました」
――戦後最大規模とされるほどの被害の大きさを最初はどのように知りましたか。
「地 震直後からの停電でテレビがつきませんでしたが、車のナビでテレビが見られることを思い出し、すぐにニュースを見て、震度や津波被害などのことを知りまし た。道場は翌日、自宅は3日後には電気が復旧したんですが、テレビやラジオでニュースを見ても、あまりの被害の大きさに正直驚きました」
――その状況の中、ブログを活用して岩手の情報を発信されていました。
「地震が起こってすぐに家族、道場生、その身内や関係者の方々の安否が心配で連絡を取っていったんです が、なかなか電話も通じないし、誰もが同じ行動を取ることでむしろ混乱を招く結果になっていると感じたので、自分が知っている情報と、連絡が取れた人から の情報をブログにアップしてみんなで情報を共有できるようにしました。それを見てあの人は大丈夫だと知ることができれば、直接連絡は取れなくてもひとまず 安心できますから。そこで自分は確認と発信に徹していこうと考えたんです」
――自分自身も大変な状況にあったと思いますが。
「岩手は車社会なんですが、ガソリン不足で町中が混乱していましたし、スーパーが開いてもすぐにお客さん が殺到して商品がなくなってしまうという状況でした。また、断続的な余震がありましたから、万が一、建物が崩壊したりして自分に何かあったらみんなへの連 絡や情報が途絶えてしまうと思い、3日間は車に寝泊まりしていました」
――最初に被災した海岸線に行ったのは。
「なんとかガソリンが確保できたので宮古道場(岩手県宮古市)に行ったのが地震から1週間後のことです。ようやく連絡が取れた宮古道場生が食料や水が不足して困っているとのことだったので、総本部からいただいた支援金で、買えるものを掻き集めて宮古に向かいました。
道場生の家も含めて9軒回りましたが、家は無事でもライフラインがストップしている状況でしたから、わずかばかりですが、支援物資をお渡しして回りまし た。すごく喜んでくださって、今でも『あのときのお弁当の味は忘れない』と言ってくださっている方もいて、少しは役に立つことができて良かったと思いまし た」
――その後は多くの支援物資が届いたそうですね。
「初めて届いたのは地震から9日目の20日でした。秋田支部長の伊藤和摩師範が自らトラックを運転して大 量の支援物資を届けてくださったんです。秋田の道場生から集まったものです、と。お米だったり、衣類だったり、日用品だったり、道場の半分が埋まるくらい 大量に。それぞれの段ボールにはメッセージも書いてありました。
伊藤師範は一緒に来られた道場生の方と荷物を下ろし終えると『それじゃ』とすぐに帰っていかれた。『お礼なんていいから。こんなことしかできないけど』 と。あれは本当にありがたかったです。いくら感謝してもしきれません。また全国から一斉に支援物資が届くと混乱するだろうからと、総本部が支援物資の発送 を一括して管理してくださって、送ってくださっていました。
また多くの方々から手紙やメールなどでメッセージが届いて、本当に嬉しくて、励みになりました。支援してくださることに対して、自分自身が恐縮してしま う気持ちもありましたが、それでは被災地の方々に皆さんの気持ちを届けられないと考え直して、ありがたく受け取らせていただくようにしました。
そういった支援物資は宮古道場の関係者はもちろん、道場の近隣の方々、避難所の方々にも届けることができたのも皆様のおかげです。様々な形で支援してくださった皆さんに感謝します」
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